医薬激浪雑記 第11回 電卓de推計 「薬剤費降下剤」

2017/01/05



 医薬激浪雑記 第11回 

 電卓de推計 「薬剤費降下剤



  医療経済コラムニスト 尾濱 浩
 
 古来、日本では数え年が用いられ、お正月は皆が一斉に年を取る、おめでたい誕生日でした。お正月には、歳神様をお迎えし、「節供(せっく)料理」をお供えしました。この「節供料理」が「お節料理」の始まりです。そのため、お節料理の一つひとつには、縁起の良い意味や願いが込められています。黒豆は「まめまめしく」、昆布巻きは「養老昆布(よろこぶ)」、蓮根(レンコン)は「将来を見通せるように」などです。薬剤費の蓮根は、NDB(ナショナルデータベース)でしょうか。薬剤費削減策の将来が見通せます。



 乱(ラン)キング

 日本人のランキング好きは、江戸時代に始まります。番付表は、相撲取りや歌舞伎役者の序列を順番に書き付けた(ランキング化した)もので、江戸時代後期(宝暦年間)には、印刷物が発行されます。やがて、東西に分けてランキング化する見立て番付が盛んになり、今日に受け継がれています。ですが、最近のランキングは、味付けが算数的です。例えば、AKB48選抜総選挙です。なぜ、選抜メンバーを上位16名に絞るのでしょうか。それは偏差値60以上が、「結構すごい」からです。


▶ 新薬シフト=辛薬剤費


 偏差値とは、順位(ランキング)を平均点(50)に置換えたものです。偏差値を使うと、異なるランキングの結果を同じモノサシで測ることができます。前回のランキング結果と今回のランキング結果を比較できれば、とても便利です。これができないと、結果が良くなったのか悪くなったのか、はっきりしません。仮に、偏差値が55であれば、受験生100人中30位くらいの成績です。つまり、上位30位とは、「平均より上」ということです。
受験生であれば、自分が志望する大学の受験生のうち、自分がどのあたりの成績かを知ることができます。製薬企業であれば、薬効分類別処方数のうち、自社製剤がどのあたりのシェアかを知ることができます。上位に名を連ねる受験生は手放しで喜べますが、製薬企業は悲喜こもごもかもしれません。「NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)オープンデータ」が医薬品の適正使用と薬剤費の削減に利活用されるからです。

▶ 血圧降下剤上位30品目中「ARB12」


 財務省が血圧降下剤ARBを槍玉に挙げる根拠は、このNDBオープンデータです。性・年齢別内服外来(院外)データから、血圧降下剤の集計結果を簡単に分析してみましょう。
2014年度(2014年4月~2015年3月)に処方された血圧降下剤の総数は35億6341万4444錠です。このうち、ARBは上位30品目中12品目(上位10品目中8品目)で18億864万4522錠、実に50.8%を占めます。ARB12品目の薬剤費は2091億円強に上ります。改定年の2014年度推計薬剤費は、8兆3753億円です。内用薬1万801品目(2014年3月31日現在)のうち、0.1%の12品目で2.5%の薬剤費を費消しているわけです。財務省からみて、配合剤(上位30品目中6品目)も面白くありません。後発品の円滑な移行を阻害するからです。

 


▶ 後発品推しで「後新交代」を加速

 その結果、長期収載品と後発品(上位30品目中17品目)は17億9453万7628錠、総数に対する数量シェアは50.4%です。後発品はシルニジピン(1品目)とカルベジロール(同)の2品目で1億3477万7033錠、長期収載品と後発品に対する数量シェアは7.5%に過ぎません。財務省には、血圧降下剤が薬剤費削減効果の大きい「薬剤費降下剤」に映っているはずです。財務省は後発品をAKB48選抜総選挙のように上位16位まで押し上げ、「結構すごい」薬剤費削減効果を得るつもりです。そのため、今後の後発品の使用促進策は、NDBオープンデータで後発品の数量シェアが低い薬効分類にターゲットを絞り、処方ガイドラインやフォーミュラリーが策定されるはずです。その先陣を切るのは、血圧降下剤です。
新旧(後新)入れ替わり、世代交代はAKB48にとっても、薬剤費にとっても、将来を占う重要なイベントになりそうです。




執筆者プロフィール 

尾濱 浩(おはま ひろし)
1956年 広島県生まれ
1978年 関西大学経済学部卒業 食品業界専門紙記者を経て、流通情報専門誌の創刊に役員として携わる。
1991年 ユート・ブレーン入社。企画編集統括チーフとシニアコンサルタントを兼務。
2014年 フリーライターに転身。主に医療・医薬品業界の変化を独自の視点で切り取る執筆活動を行う。