40代・50代の方が転職を考えた時、他の職種の40代の転職と同様に今まで培ってきたキャリアやスキルを発揮する企業でないと実現することが難しいのでしょうか。

40代・50代の薬剤師の転職事情や転職市場における市場価値、希望の転職を実現するための方法を解説します。

40代の薬剤師が転職を考える理由

転職活動を行うきっかけは人さまざまですが、40代の薬剤師が転職を考える理由はどのようなものがあるのか、代表的な理由を挙げてみます。

給与面に不満を感じたため

調剤薬局で勤務する薬剤師に多い転職理由です。

一部(大手薬局チェーンなど)を除くと調剤薬局は純粋な営利目的で運営している訳ではありませんので売上が年々伸びていく、という業態ではありません。

安定した運営を行っている調剤薬局でも、勤務している人たちの給与を上げる要素があまりないのです。

給与が上がる大きな要因はマネジメントポジションに就くことになりますが、ポジションの数にも限りがあります。

例え同期入職で実力が同じでも何らかのきっかけで役職に差がつき、それに伴い給与に大きな差がつくこともあります。待遇面に不満を抱く要素の一つでもあります。

環境に変化がないため

薬剤師の業務は社会的貢献度が高くやりがいがありますが、基本的に同じ場所で同じメンバーと同じ業務を繰り返すことが多い職場です。

ある意味閉鎖的な環境と言えるでしょう。このような職場では経験を積めば積むほど刺激を受けることも少なくなり、業務に対するモチベーションを保てなくなる方がいます。

そんな方が環境を変えたいと思われるのは当然のことかもしれません。

夜勤や当直などが大変に感じるようになったため

20代や30代は多少無理な勤務状況でもこなすことができた、という方でも40代になると多かれ少なかれ体力の衰えを感じるはずです。

夜勤や当直がある勤務を行っている方は特に衰えを感じることでしょう。日勤だけの職場に移りたいと感じている40代の薬剤師の方は多いでしょう。

未経験分野にチャレンジしたいため

薬剤師の資格を活かし違う業界や分野にチャレンジしたい、キャリアチェンジしたいという転職理由です。キャリアチェンジは若い年代でないと難しいことですが可能性はあります。

40代の薬剤師の転職市場の状況

次に40代の薬剤師の待遇面に関する状況と、転職できる可能性のある業界の状況を解説します。

ご自身の給与が相場と比較してどうなのか?気になる業界は転職しやすいのか?とお悩みの40代の薬剤師の方は参考にしてください。

40代の薬剤師の平均年収

40代の薬剤師の平均給与について説明します。人事院が公開している「平成30年度職種別民間給与実態調査の結果(※)」では、40歳から44歳の薬剤師の平均月収が412.406円、44歳から48歳では平均月収が438,734円です。

この資料では賞与に関する情報がなく年収換算をすることができないので一概にこの給与額が高いか低いかは判断するのが難しいのですが、指標になる数字であることは事実です。参考にしてください。※https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/minn/minnhp/min30_index.html

調剤薬局、ドラッグストアの転職市場状況

次に転職の可能性のある業界の状況を説明します。まずは薬局、ドラッグストアの状況です。

売り手市場である薬剤師の転職市場において、採用意欲が高い業界です。
特に大手の調剤薬局やドラッグストアは積極的に出店を拡大行っており、多くの店舗で薬剤師を必要としています。

さらに現在は他社との差別化のために多彩なサービス(24時間サービスなど)も行っている店舗も増えているので年代関係なく薬剤師は重宝されます。

病院、企業(医薬品メーカーやメディカル系企業など)の転職市場

薬剤師の転職先として人気の病院や企業の中途採用は基本経験者採用となり、しかも欠員補充でしか募集を行うことがないため、狭き門と言えます。

ただ、病院でも療養型病院であれば経験が浅くても採用される可能性が高くなります。

また、企業の転職に関しては、営業職や事務職など他の職種同様の選考(面接数回に時には適性検査の実施など)を行うので選考対策は必須です。

40代の薬剤師は未経験業種への転職ができるのか?

業界を変えたいと希望する薬剤師が多いですが、果たして40代でも未経験の業界にチャレンジできるのかどうか?採用する側の事情を解説するとともに未経験分野にチャレンジするために忘れてはいけないことを紹介します。

40代の採用は基本的には経験重視

一般的に未経験採用は30代前半までをターゲットにすることが多いため、40代からの未経験のチャレンジはハードルが高いと言わざるをえません。

採用側が40代に求めるのは業界や業務の経験や知識、マネジメント能力などといった経験に基づくスキルであることは認識してください。

未経験でもチャレンジ可能な職場

しかし40代の未経験者でもチャレンジ可能な職場があります。例えば人が集まりにくい職場や、若い方が定着せず腰を据えて勤務して欲しいのであえて落ち着いた40代を採用する、というパターンです。
「人が集まりにくいから(定着率が悪いから)未経験者でも40代でも採用する」という求人に対して応募する側はネガティブな印象を持つかもしれません。

確かに選考を受けるのであれば慎重に検討しなければいけませんが、純粋に採用する側が非常に困っているおり、採用した方を重宝してくれるかもしれません。

未経験者がチャレンジ可能な職場に応募する際は、環境が整っているのかどうか、研修制度が整っているかどうかをしっかりと確認してください。

早期に活躍できるかどうかの大きなポイントになります。

経験の浅さをカバーできるスキルやキャリアはなにかを考える

薬剤師が未経験分野にチャレンジする時には、経験不足をカバーできるスキルはなにか?を考えることはとても大切です。

この場合の「スキル」とは、コミュニケーション力、モチベーションの高さといったヒューマンスキルはもちろんのこと、語学力やマネジメント能力や文章作成能力などといったスキルが挙げられます。

いずれにしても具体的にアピールできるスキルはなにか?を用意してください。

40代の薬剤師が転職する際に注意する点

40代の薬剤師が転職を成功させるために、転職活動を行う際に忘れてはいけないことを紹介します。

自身のスキルやキャリアの棚卸、希望を明確にする

まずは、今までのキャリアにおいて「自分は具体的に何ができるのか?どの程度の経験があるのか?」さらに「何をしたいのか?何が希望なのか?」を明確にしてください。

自身のスキルやキャリアを把握することによって強みを確認することがでます。強みが確認できれば強みを活かせる(活躍できる可能性が高い)という観点で求人案件を探すことができます。

希望をピックアップしたら優先順位をつけることも重要です。求人案件が多いと選択に悩んでしまうこともありますが、希望の優先順位が明確であれば迷うこともないでしょう。

謙虚になる

薬剤師は、年下の同僚や場合によっては年下の上司と一緒に仕事することがあります。

プライドが高く自分のやり方を押し通す人は採用されないということはご理解いただけるはずです。謙虚な姿勢を持って転職活動を行ってください。

年収だけで判断しない

お金は非常に大切です。高い給与額の案件に応募したいと考えるのは当然のことです。しかし、他の案件と比較して明らかに給与が高いのは何らかの理由がある、と考えた上で応募してください。人が少なくてとても忙しいかもしれませんし、拘束時間が非常に長いかもしれません。

50代の薬剤師の就労状況とは

一般的に50代の転職は案件が少なく厳しい、と言われていますが、50代の薬剤師の転職状況は果たしてどのような状況なのでしょうか?結論から言うと可能性は充分あります。

しかし転職可能なポジションと不可能なポジションが存在します。

現在の転職市場の状況や50代の薬剤師の方が転職を成功させるためのコツや方法を紹介します。

現在の50代の薬剤師の状況なのか、まずは現在の薬剤師の年齢構成比や50代の薬剤師の就労状況などを解説します。

現在の薬剤師の年齢構成

厚生労働省の2016年度の統計結果では、薬剤師の全体のうち50代が占める割合は19.5%です。

因みに20代は14.4%、30代が25.5%、40代は23.8%です(20代はどんなに早くても23歳から勤務することになるため(現在の薬科大学は6年制)、少ない人数になってしまいます)。

年代別のボリュームゾーンは30代となりますが、それでもおよそ25%の割合であり、各年代の比率にそれほど大きな差がないことが理解いただけるでしょう。

※2016年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/kekka_3.pdf 

50代の薬剤師の勤務状況

50代の薬剤師がどこで活躍されているかを紹介します。

2016年の統計結果では、およそ60,000人の50代の薬剤師が勤務していますが、そのうち薬局で勤務している方がおよそ35,000人、次いで企業がおよそ10,000人、病院・診療所でおよそ5500人、大学がおよそ1100人、と続きます。

やはり薬局に勤務する方が大半(およそ58%)を占めています。

転職市場における50代の薬剤師の市場価値

次に転職という観点で、50代の薬剤師の状況や市場価値について説明します。

全般的に若い年代と比較すると正社員の求人が少ない

一般的に50代は若年層と比較すると正社員の求人数が少なくなりますが、これは薬剤師でも同様です。なぜ50代の求人が少ないのかは

  • 「定年が近くて長期間の勤務ができない」
  • 「体力的な問題」
  • 「新しいことに対する習熟度のスピードが遅い」

といった様々な理由が挙げられます。

採用する側とすれば自然な心理であり仕方のないことです。

人が集まりにくい職場では年齢は関係なく募集はある

50代の求人が少ないのは間違いありません。しかし年齢を問わない薬剤師求人があることは事実です。

例えば積極的に拡大をしているドラッグストアであれば、薬剤師の存在は必要不可欠ですので年齢関係なく募集しています。また、地方圏や通勤困難な地区、といった人が集まりにくい職場でも幅広い年代の薬剤師を対象とした募集を行うことも多いです。

あえて50代を募集することもある

若手ではなく敢えて50代を採用したい、という職場もあります。

既存メンバーの経験が浅いので経験豊富なベテランの力を借りたい、定着率が悪く短期間で退職する方が多いので落ち着いて勤務してくれる人が欲しい(定着率がなぜ悪いのかはしっかり確認しないといけませんが)、メンバーをまとめてくれる、マネジメント経験を持っている人を採用したい、などといった理由からです。

50代の薬剤師が転職を成功させるための秘訣

50代になると転職後に何らかの理由で後悔したと感じても、そう簡単に次の機会があるわけではありません。
失敗できないので慎重に転職活動を行う必要があります。50代の薬剤師が転職を成功させるための秘訣を紹介します。

経験を活かせる仕事を探す

50代でも新たなチャレンジ(薬局から病院や企業、企業から調剤薬局など)をしたいと希望される方はいるかもしれませんが、さすがにキャリアチェンジは難しい状況です(別業界からドラッグストアへの転身は可能性があります)。

50代の薬剤師が転職を成功させるには経験を活かせる職場を探すことがいちばんの近道です。

「経験を活かす」のは業界経験だけではなくマネジメント経験といった要素も含みます。

柔軟な考えと広い心を持つ

いくら経験豊富でも謙虚な姿勢でいることは転職を成功させるためにとても大切です。どのような職場でも良好な人間関係を保つことに苦労しています。

薬剤師が勤務している職場はあらゆる年代の方が勤務していることが多く、50代の方はただでさえ年齢がハンデとなります。経験を鼻にかけず年下の人にも謙虚で接することができる方でないと転職は成功しません。

雇用形態を柔軟に考える

転職意欲の高い方であれば、正社員にこだわらず派遣社員や契約社員も視野に入れて転職活動を行うことをおすすめします。例え契約社員や派遣社員でスタートしたとしても、勤務の実績次第では正社員の登用の可能性もあるからです。

長い目で活動する

薬剤師でも50代となると、転職活動を行っても短期間で決まらない可能性があることは否定できません。ですので、転職活動は、時間がかかることを覚悟し余裕を持って行ってください。

簡単に転職が実現しない可能性があることを踏まえ、勤務しながら活動を行うこと、また、選考が通らなくてもくよくよせずに次の機会にチャレンジし続けるスタンスが必要です。

40代・50代の薬剤師が転職先を見つけるためには?

50代の薬剤師が転職先を見つけるための具体的な方法を紹介します。希望の職場を見つけるためにはとにかく幅広い情報源を持ってください。

転職エージェントを利用する

いちばんのおすすめは転職エージェントに登録することです。登録すればキャリアコンサルタントから求人情報だけではなく現在の転職市場の状況やトレンドも知ることが出来ます。

また、薬剤師専門の転職エージェントには様々な雇用形態の求人案件が集まっています。

40代・50代の方でも応募可能な案件があるはずです。

転職エージェントには複数のエージェントに登録してください。幅広い情報源ができること、サービスの比較ができること、エージェント独自の案件情報を逃さないようにすること、などがその理由です。

転職サイトで探す

インターネットの転職サイトも有効な情報収集の手段です。「とらばーゆ」や「はたらいく」のような転職サイトは転職エージェントを使わずに採用を行う調剤薬局や診療所などの情報を掲載することが多いですし、「indeed」では希望のキーワードで検索すれば合致する案件が提示されます。

現在検索エンジンの性能も向上しており、Googleも求人情報の提供に力を入れています(「Google for Jobs」というサービス)。今後、有効な情報が簡単に入手することができるでしょう。

派遣会社に登録する

正社員のこだわりがなければメディカル業界に強い派遣会社に登録するのもひとつの手段です。派遣であれば正社員よりも案件の数は多く、より勤務地や環境などの面で希望に近い案件を見つけることができるでしょう。

また、紹介予定派遣の案件であれば正社員登用の可能性もあります。

40代・50代の薬剤師におすすめの転職エージェント

転職活動の有効な手段として転職エージェントを紹介しました。現在多数の転職エージェントがありますが、その中で50代の薬剤師におすすめの転職エージェントを紹介します。

ポイントは下記の2点です。

  1. 「薬剤師の案件を中心に取り扱っていること」
  2. 「求人数が多いこと」


マイナビ薬剤師

https://pharma.mynavi.jp

マイナビ薬剤師は就職支援サービスを展開しているマイナビグループが運営している薬剤師を対象にした転職エージェントです。マイナビ薬剤師には常時50,000件を超える多数の求人案件の依頼がありますので、年齢にこだわらない求人案件が見つかる可能性が高いでしょう。

薬キャリ

https://pcareer.m3.com

メディカル情報サービスを提供しているエムスリー株式会社のグループ企業、エムスリーキャリアが運営しています。依頼されている求人件数はマイナビ薬剤師同様およそ50,000件と数多く取り扱っています。

エムスリー株式会社は優良な医療情報サービス企業として多くの医療従事者から認知され高い信頼を得ています。信頼されているからこそ優良案件が揃っています。