第32回 保険薬局と病院の訪問順番を変えてみたら?

2020/02/28



 第32回 保険薬局と病院の訪問順番を変えてみたら?
 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。

前回、MRが保険薬局に訪問した際、薬剤師と適切なコミュニケーションが図れないケースがあったり、それが広く薬剤師間に広まることがあることをお伝えしました。

一方で、MRが保険薬局と病院・クリニックをうまく繋いでいる事例も聞きました。
今回は、その続きを一緒に見ていきましょう。


 

◆前回の振り返り


 患者さんやご家族は、医師の診察時に、つい「話すべきことを忘れてしまった」「話しそびれてしまった」「言いたいことが言い出せなかった」などがあります。
 その際、処方箋を持って入った保険薬局の薬剤師に質問することがあります。
 その内容は、医師に共有されることもあれば、共有されないこともあります。
 そのことで患者さんやご家族に不利益が生じることもあります。



医師は診察時に何を手掛かりとしているか?

 私が医業経営コンサルタントとして病院の医師と面談する際、患者の診察の場面が話題になることがあります。
 その経験を踏まえて一般論として申し上げますと、医師は診察の場面で、患者さんまたは患者さんのご家族からの限られた情報の中で診断し、治療方針を決定し、経過を観察しています。
 逆に言えば、医師は患者さんや患者さんのご家族から情報が得られなければ、患者さんを適切に診療することができないことがあるということです。
 特に精神疾患や小児疾患の場合は、ご家族から自宅での様子をお話しいただくことは、医師の診察時に非常に重要な情報です。

 患者さんがご自宅に戻ってからの日常生活について、医師は知り得ません。
 ご自宅の中での患者さんの様子はどうか、指示通りに服薬ができているか、いつもと変わったことはないか、食事は適切な量で適切な栄養を摂取できているかなど、医師にとっては極めて重要な情報であっても、限られた診察の時間内では、患者さんもご家族も医師にそれらの情報をきちんとお伝えできないことが多々あります。

 一方の患者さんやご家族は、医師を受診する際にいつもの落ち着いた自分自身ではいられないことが多いです。
 患者さんが苦痛であったり、意識がなくなったりしていれば、患者さん本人もご家族も取り乱すことがあります。
 そのような時ご家族が医師に、患者さんの状況を冷静かつ正確に説明することは極めて難しいことです。

 さらには、患者さんやご家族は、医師に対して遠慮してしまい、自分たちの希望を医師に伝えられずに診察を終えてしまうことがあります。
 これは、患者さんやご家族が以前医師を受診した際、自分たちの希望(例えばセカンドオピニオンを受けたいなど)等を伝えたところ医師の機嫌を損なってしまい、患者さんが満足の行く診療をしてもらえなかったという思いがあるときに、医師に対して遠慮してしまうことがあるようです。

 医師側にも十分改善すべき点があるのですが、患者さんとしてはつい医師の顔色をうかがってしまうものです。

 したがって、医師の診察後に患者さんやご家族が「あ、あのことを言い忘れた」と思うことはたくさんあります。
 これらを「医師の診察の場面でいかに防ぐか」ということが患者さんの治療ではとても大切ですが、それがなかなかできないので薬局の薬剤師に相談するというのが、現状です。


患者さんと医師・薬剤師のニーズに、どこまで応えうるか?

 患者さん・薬剤師・医師のニーズ」を踏まえた何らかの支援は、患者さんとご家族、医療者への貢献になり得ます。

 2019年11月27日に成立した改正薬機法には、薬剤師に関連することで下記のポイントがあります。
 ● 薬剤師による継続的な服薬状況の把握・服薬指導義務の法制化
       (公布からの施行時期1年以内)
 ● 「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」の導入(同2年以内)
 ● テレビ電話などによる服薬指導の導入(同1年以内)

 これらが近い将来実行されるようになれば、保険薬局と病院との間で患者さんに情報共有が盛んになるかもしれません。
 しかし現実には、今の段階では前述の通り薬剤師と医師が1人の患者さんの情報を共有できていないことが多いようです。

 前回お伝えいたしましたように、医師は患者さんやご家族のご自宅の様子を知り得ません。
 そこで生じている不都合・不具合などもわかりません。
 また、保険薬局には、かかりつけ薬剤師としての職能を果たすことが改正薬機法にて薬剤師に求められています。

 しかしながら、当の薬剤師側では
 「重要なことは分かっているけれど、具体的に何をどう取り組むのかが、患者さんレベルにまで落とし込めていない」
 「かかりつけ薬剤師として患者さんをサポートできるのは、中等症・重症の患者さんではないか?軽症の生活習慣病の患者さんでは、かかりつけ薬剤師の必要性を感じていない患者さんが非常に多い」
 「国がやりたいことは理解できるが、近隣の住民にそのことが伝わっていない。かかりつけ薬剤師のことを知らない住民が多く、苦労してかかりつけ薬剤師について説明しても、結局かかりつけ薬剤師の同意が得られないことがほとんどだ」
などの声があります。

患者さんの声を医師に届け、医師の診療と薬剤師の服薬指導を
 一層充実させるためには?


 以前お伝えいたしました通り、製薬企業のMRは処方元の医師の治療レジメンを確認すべく保険薬局に訪問することがあります。
これは医師に処方依頼・処方確認をした後、実際に薬局に訪問し処方状況の裏付けを取ることで、医師の治療レジメンの確認や実際の処方患者数の精度を高めるなどを目的とした活動です。

 この訪問の順番を、逆にしてみてはいかがでしょうか?
すなわち、保険薬局に先に訪問し、患者さんが薬剤師になさった質問を伺い、その質問を医師に届けるのです。

 この効能は、
 ● 医師が患者さんの質問をより深く正確に精緻に知ることができるため、
    場合によっては診療の質の向上を図ることが期待できる
 ● 医師が患者さんの本音を知ることができ、その本音に応じた診療を
    患者さんに提供できれば、患者さんの診療に対する満足度が向上できるため、
    結果として医師の満足度が高まる
 ● 薬剤師も患者さんと医師の相互理解が深まることで、薬局での投薬を
    スムーズに行うことができ、業務効率が高まる

といったことがあります。

 病院・クリニック・薬局などを情報でつなぐことができるのは、MRかMSです。
 MRの機動力を上記のような観点も持って活用されてみるというのはいかがでしょうか?



 

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