第28回 ガイドライン前後の製薬企業の情報提供について④

2019/10/09


 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 今回も、ガイドラインの施行前後における薬剤師による製薬企業への評価を比較検討してみます。
 この検討によって、製薬企業の医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(以下ガイドライン)への対応がうまく行っているのかどうかが検討可能になることでしょう。データはネグジット総研様が実施されたアンケート結果です。アンケート名は「ガイドラインに関する調査」です。本アンケートは、ガイドラインの施行後2ヶ月以上経過した時点で実施されました。
 この結果から、ガイドラインに準拠したガイドライン対応としてどのようなことがポイントになるのかを検討してみましょう。


◆今回の調査について

今回ご紹介する調査の概要をお知らせいたします。
調査名:「ガイドラインに関する調査」
サンプルサイズ:468名(保険薬局勤務 294名、病院勤務 174名)
調査期間:2019年6月21日~27日
調査方法:WEBアンケート
調査実施機関:(株)ネグジット総研 薬剤師調査MMPR


◆ 2019年6月1日以降の各製薬企業の情報提供活動の状況

このアンケートでは、ガイドライン施行後の2019年6月1日以降、製薬企業やMRから医薬品情報の提供がどのような状況なのか等を薬剤師に尋ねています。 質問は3つあり、最初は ・6月1日以降、製薬企業の担当者から直接、医薬品情報の提供を受けましたか?(MR訪問、勉強会など) という質問でした。 まずはここから見ていきましょう。
(回答は一つだけ選択 サンプル数468)


この質問に対して、83.5%の薬剤師が「MRから直接医薬品情報の提供を受けた」と回答しています。 6月1日~27日までの約1ヶ月弱で83.5%の薬局にMRが訪問していたということになります。 この時期に医薬品の安全性に関する情報提供としては、どのようなものがあったのでしょうか? 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページによれば、6月4日付で
◆重要な副作用等に関する情報
【1】デュラグルチド(遺伝子組換え)
【2】エンパグリフロジン
【3】ニボルマブ(遺伝子組換え)
【4】レンバチニブメシル酸塩
【5】インフルエンザHAワクチン
◆使用上の注意の改訂について(その303) デュラグルチド(遺伝子組換え) 他(11件)
◆市販直後調査の対象品目一覧(https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0159.html) が発出されています。
これらの安全性情報の提供の必要性もあり、MRによる薬局の訪問や情報提供があったとも考えられます。



◆ ガイドラインの認知度

2つめの質問は「製薬企業等に対して、2019年4月より、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が適用されていることをご存知でしょうか。」でした。 この質問に対する回答を下記にお示しします。 (回答は一つだけ選択 サンプル数468)


 この結果から、薬剤師の約2割がガイドラインのことを知っていて、約5割は聞いたことがあり、3割弱が全く知らないということがわかりました。

 「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」は製薬企業とMR が遵守すべきものなので、薬剤師の関わりはありません。 しかし、情報の受け手である薬剤師から見たとき、同じ人物のMRが、これまではいろいろと情報提供をしてくれたのに、2019年4月1日から突然説明してくれる情報が少なくなったり、全く情報を提供してくれなくなったなど変化してしまうと、戸惑う薬剤師は出てくることでしょう。

 そしておそらく、少なくても上記の26.3%のガイドラインを全く知らない薬剤師ほど、なぜMRや製薬企業の情報提供活動が変化したのかがわからないために、MRや製薬企業に対して不満に思うかもしれません。

  特に、質問1で「MRから情報提供を受けた」と回答した薬剤師の中で、その3割の薬剤師がガイドラインの存在を知らないとしたら、その薬剤師の対するMRの訪問やその際の対応によって、顧客満足度を下げてしまいかねないということも考えられます。

 厚生労働省の調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/kekka_3.pdf )によれば、平成28年度の時点で全国の届出薬剤師数は約30万人でした。 もし、その3割、すなわち約9万人の薬剤師がMRや製薬企業の情報提供活動に対して不満に思っているとしたら、MRや製薬企業にとって由々しき事態に陥っている危険性があるかもしれません。
 
 このような変化に対して、薬剤師や医師がSNS等にガイドラインに対して批判的な内容の投稿していることなども散見されていますが、その数はまだまだ少ないです。
 
 このような点から、薬剤師に対して
・ガイドラインが施行された経緯やその内容
・それを踏まえてMRや製薬企業の情報提供活動がどのように変化したのか
を、ガイドラインを知らない薬剤師にきちんとお伝えする必要があるのではないかと考えられます。

 そのような事前の説明がなく、MRが突然 「そのご質問には答えられません」 と対応してしまったことで薬剤師との関係が悪化したMRもたくさんいるようです。

 このようなことを製薬企業の営業の現場に任せてしまうのではなく、本社でもMRをサポートできることを探して取り組むことが重要です。
 

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