第14回 薬局とフォーミュラリ

2018/06/29

 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。

今回は、薬局とフォーミュラリについて考えます。
このサイトのネグジット総研様が先般、病院の薬局に勤務する薬剤師へのアンケートを実施しました。その結果からは、現在の病院薬剤師のフォーミュラリへの認識などが垣間見える興味深い示唆が得られそうです。
今回は、この点を皆様と一緒に見ていきましょう。


アンケートの概要
まず、このアンケートについて確認します。
・アンケートの対象:病院勤務薬剤師
・アンケート回答者数:222名
・アンケートの設問
 設問1 貴施設では、患者に対して最も有効で経済的な医薬品の使用における方針
     (いわゆる「フォーミュラリー」)を定めていますか。(1つのみ選択回答)
 選択肢 1.定めている
     2.今は定めていないが、2018年末迄に定める予定
     3.今は定めていないが、検討中
     4.全く未検討
     5.「フォーミュラリー」という言葉を知らなった
     6.その他 

 設問2 厚生労働省は、生活習慣病治療薬などで標準的な薬剤選択の推進を進める
     方策として、医薬品の推奨リストである“フォーミュラリ”の導入を提案して
     いますが、“フォーミュラリ”の導入に関して課題や、感じていることなど
     自由にご記入ください。(自由回答)


◆ アンケートの結果 設問1

では、設問1の回答結果から見てまいりましょう。

        回答の選択肢                                     回答の割合と実数
 定めている                     6.31%   14
 今は定めていないが、2018年末迄に定める予定   6.31%   14
 今は定めていないが、検討中           28.38%   63
 全く未検討                   30.63%   68
 「フォーミュラリー」という言葉を知らなった   27.93%   62
 その他                       0.45%     1

この結果から、以下のようなことが見えてまいります。
「フォーミュラリを定めている」、もしくは
「2018年末までに定める予定」の薬剤師は12.6%いる

→ 現場のMR諸氏はわかっているでしょうが、すでに実績にも影響が出ていることと考えられます。
フォーミュラリから漏れてしまった薬剤は、フォーミュラリに採用された薬剤を超えるEvidenceやHTA(Health Technology Assessment)等の費用対効果を示さなければ、フォーミュラリに採用されることはないでしょう。


「現在フォーミュラリを検討中」の薬剤師は全体の約3割いる
→ フォーミュラリを検討するに至った背景を想像すれば、
  ・病院の医薬品の購入金額が大きすぎて、病院経営に支障を来している
  ・病院の採用品目を整理したい
などがあったと思われます。
この場合、病院内で薬剤の処方が滞っており、病院内に余剰在庫も増え、薬剤師も増えすぎた採用品目の管理に苦戦しているということが伺えます。
だとすれば、MRとしてはもっと早く病院側に下記のような提案をしておくべきだったと考えられます。
  ・救急の患者さんの受け入れを増やし、急性期医療を提供する病院として地域の中
   での位置付けを確立する
  ・病診連携を推進し、連携先のクリニックからの紹介患者を増やし、退院後はそのク
   リニックでフォローしてもらう体制を構築する
  ・自社製品が医療者や患者さんに提供する価値を明確に医療者にお伝えし、自社
   製品を治療のレジメンに必ず組み込んでいただく など


「フォーミュラリを未検討」の薬剤師も全体の約3割いる
→ この施設は、今後周辺の医療機関の取り組みによってはフォーミュラリの導入に動く可能性があります。
いつそのような状況になっても良いように、上記②で示したような取り組みを先んじて打っておく必要があるかもしれませんね。


「『フォーミュラリ』という言葉を知らない」薬剤師も全体の約3割いる
→ フォーミュラリを知らないということは、病院経営や薬剤管理などに興味がなかったり、必要がないということが考えられます。
今現在ではすぐ対策を打つ必要はないかもしれませんが、今後どのような動きを見せるのか十分な注意が必要ですね。


アンケートの結果 設問2

アンケートの設問2は、病院薬剤師の生の声がたくさん見受けられました。
大まかに分類すれば、下記のような区分に整理されるようです。
フォーミュラリの考え方に賛同している
医療費抑制、治療の標準化の観点からフォーミュラリを支持
患者さんにとって高額な薬剤の安易な処方を防げる
小規模病院では医師の独断で治療が行われ、その治療が現在の標準治療とは言い難い場合もある


フォーミュラリの考え方に賛同も反対もしないが、中立の立場である
医師との連携や処方権とのバランスがあるので、取り組む際の課題になる
今後どうなるかわからない
必要性を感じない
個々の医師の処方がバラバラなので、導入は考えられない
たくさんの知識が必要だと感じている
医師の好みがあるので統一するのが大変、基準が難しい
病院としての在り方を考えて発言する人が少ない
フォーミュラリが導入できる分野(生活習慣病など)と導入が困難な分野(小児科)があると感じている
薬剤師主導でフォーミュラリを作成しても医師がなかなか受け入れてくれない
フォーミュラリの考え方に反対している
リストを作ったところで従わない医師は必ず出てくる
フォーミュラリ導入により、疑義紹介などが発生するなどはやめてほしい
これ以上薬剤師の仕事を増やさないでほしい
癒着がはびこりそう
診療の自由度が低下する
フォーミュラリと地域医療構想が重なったら、提供できる医療が型にはめられすぎて病院の個性が消されそう


フォーミュラリを知らない
自分は知っているが、周囲の薬剤師は知らない
自分も周囲の薬剤師も知らない

◆ これらの結果から、今後どのような活動が考えられそうか?

もし医療者とフォーミュラリについて話す機会があったら、上記の内容を踏まえて様々な話が可能でしょう。その病院へのフォーミュラリの導入の可能性を確認し、自社医薬品が必ずフォーミュラリに入れていただけるような働きかけが重要です。
また、日頃薬局にはきちんと訪問し、薬局から「この製薬企業・MRは、安心してフォーミュラリに採用できる」と評価されることも必要でしょう。
さらに、フォーミュラリはその病院のみでなく、その病院から処方箋が流れる周辺の薬局にも影響が及ぶので、地域全体の医療について常に興味関心を持ち情報収集をし続ける必要があるでしょう。もちろんそのためには医薬品卸のMSさんの力も欠かせません。
このように、すでに医療制度の理解なくして医薬品の売上アップは考えられない時代に突入しています。フォーミュラリは製薬企業やMRの実績に大きく影響してきますので、この機に地域の医療現場の最前線を調べて見ましょう。