第12回 平成30年度診療報酬・調剤報酬・薬価の各改定の影響を踏まえ、製薬企業やMRがやるべきことは?

2018/03/28

 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。 
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。

 今回は、平成30年の診療報酬・調剤報酬・薬価の各改定が与える調剤薬局への影響を踏まえ、製薬企業やMRがやるべきことが何か?という点を皆様と一緒に検討していきます。




 皆様もご存知の通り、今回の各改定はそれぞれ従来に比べて大きく変化しました。
 私を含めた医業経営コンサルタントの間では、例えば「Ⅰ 診療報酬改定の地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」では

 • 7対1、10対1の一般病床入院基本料の再編や統合
 • 在宅医療の推進と質の向上


がよく話題になりますし、「Ⅱ 新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実」では

  • 遠隔診療の実際の運用

が注目されています。
「Ⅲ 医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」であれば、

 • 病院スタッフの働き方改革や業務の効率化、合理化

は非常に大きな変化です。よく知られているように、「医療者、特に医師の業務量の増大と長時間労働」、これらによる「医師の睡眠不足」、そしてそこから引き起こされかねない「医療の質の低下の危険性」は深刻で、「医師の長時間残業の常態化は、早急な改善が必要」と厚生労働省も認識しています。そのための具体的な改善案として、

  • 総合入院体制加算の要件が拡大
  • 医師事務作業補助体制加算等の要件見直し
  • 勤務場所の要件緩和(これが上記の遠隔診療の実際の運用にも深く関わっていますね)


などが盛り込まれました。簡単に申し上げますと、「医師はできる限り仕事を他の人に任せ、労働時間を短縮し、早く帰宅してゆっくり休んでほしい」ということです。

  診療報酬は改定のたびに医療機関の経営に大きな影響を及ぼしますが、今回の改定も医療機関の収益に極めて大きな影響(数億円単位はゆうに超える病院もたくさんあります)が出ますので、医業経営コンサルタントへの問い合わせもたくさんあります。 また、上記を鑑みますと、製薬企業のMRが今後一層医療者との面談がしにくくなることも予想されますね。なぜなら、今後は医師が残業時間を短縮することで病院にいる時間が短くなったり、通常の診療時間に加え遠隔診療の対応で時間が取られる可能性があるからです。




 では、今回の各改定が調剤薬局にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
 医業経営コンサルタントの間では、全般的に見れば、調剤薬局は病院や診療所ほどの影響がないと見られています(これは逆に、各改定が病院に及ぼす影響が大きすぎるため、相対的にそのように見えるということでもあります)。
  とは言え、調剤薬局を「広域の薬局グループ(平成30年診療報酬改定の概要では「【薬局グループ】 ⇒グループ全体の処方箋受付回数が月4万回超」と表記されていますので、これに従います)」、「小規模複数店舗のグループ(グループ全体の処方箋受付回数が月4万回未満)」、「個人薬局」では影響の出方が全く違っていることも事実です。
  ここからは、薬局の大まかな経営規模別に改定の影響を見ていきましょう。以下の解説は、私が所属している日本医業経営コンサルタント協会の研究会で行われている調査や検討内容および薬局への取材を中心にまとめてみました。

 
1. 広域の薬局グループへの影響

  (ア) 広域の薬局グループの多くは病院の門前薬局でもあります。今回の改定では、この門前薬局の
    特例が見直されました。具体的には
   ① 特定の医療機関からの処方箋集中率が極めて高い保険薬局
   ② 医療機関と不動産の賃貸借関係にある保険薬局 の調剤基本料が引き下げられました。
  (イ) 処方箋集中率が95%から85%に引き下げられました。
  (ウ) (イ)によって、処方箋受付回数・集中率による現行の調剤基本料の特例範囲が
    拡大されました。点数の引き下げ幅は変わりませんが(従来通り、調剤基本料1
    の41点が調剤基本料2の25点に引き下げられます)、調剤基本料の引き下げ
    対象の薬局が増えます。
  (エ) 上記3点の変更によって、広域の薬局グループの利益率が一層低下します。
    このことは、広域の薬局グループとの取引全般に大きく影響しますね。
  (オ) ただし、規模が大きな広域の薬局グループはすでに経営のコンサルタントの助けを
     借りて、すでに対策を始めています(例:業務効率の改善、薬剤師の報酬の据え
           置き、薬局グループ本部での納入価の交渉など)。診療報酬改定は予断を許さない
           状況ですが、財務上はまだ手を打てる状況ではあります。

 
2. 小規模複数店舗のグループへの影響

(オ)今回の改定で、最も経営戦略を検討しなければならないと考えられるグループです。
   打つべき対策は広域の薬局グループと似ているのですが、そもそもの財務体質が広域
   の薬局グループよりも脆弱であることが多く、コンサルティングを依頼する費用が捻
   出しにくいためです。
(カ)このカテゴリーに入る薬局のうち、前回、もしくはそれ以前から在宅医療に参入して
   いる薬局は、比較的経営が順調なようです。在宅医療を後押しする国の方針でインセ
   ンティブが効いていると考えられます。また、在宅医療への参入に躊躇している薬局
   がまだまだ多いため、すでに在宅医療を手がけている薬局は病院や在宅医、地域包括
   支援センターなどと連携を図り、受け持ち患者さんの人数を順調に増やしています。
   まさに先行者利益を享受できている状況と言えます。
(キ)このカテゴリーに入る薬局で、従来の薬局ビジネスを継続しているところは今後経営
   が非常に厳しくなると見られています。この(キ)に該当する薬局は、従来の「処方
   箋を待つ経営」方針以外の具体的な打ち手を検討していなかったり、新しいことに取
   り組むことに苦手な薬局が多いです。


3. 個人薬局への影響

 (ク)このカテゴリーも上記(キ)同様に、今後の薬局経営が厳しくなると見られています。
 (ケ)ただし、このカテゴリーの場合は、薬剤師個人が経営している薬局ですので、薬剤
    師の意識が変わることで経営状況も一気に変化を起こすことが可能です。
 (コ)この場合、重要になるのは薬剤師の薬局経営に対する危機意識です。これがなけ
    れば、薬局の経営改善は見込めないと考えられます。

 このように薬局も様々なセグメントに分けることができそうです。もし製薬企業やMRの皆様が、薬局でのプロモーション等を検討されているなら、各セグメントに応じた、適切な打ち手が必要かもしれません。従来からよく見られる期末の実績のための発注の前倒しをお願いしようとしても、それが可能な、財務的に余力を持つ薬局は限られています。
  ですから、以前のコラムでも取り上げましたように、

  • 薬剤師と患者さん間や、薬局のスタッフ間のコミュニケーションを良くして、患者
  さんの定着(リピーター化)を図る
  • 薬剤師と処方元の医師との合同の勉強会を企画する


などの、長期的に薬局経営が安定し、患者さんや薬剤師の満足度を高め続ける工夫が求められています。 私や日本医業経営コンサルタント協会の研究会の調査だけでなく、薬局に対する患者さんの満足度調査などもありますので、それらの調査結果をもとに、薬局の薬剤師と様々な話をしてみることも重要です。 きっと、現場の本音を知ることができ、今後のプロモーションやMR活動にも役立ちますよ!