第7回 調剤薬局でのコーチング

2017/10/04

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皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 今回は、調剤薬局でのコーチングについてお伝えします。

 ご存知の方も多いかと思いますが、コーチングは様々な業界で広く知られていますし、使われています。
 医療業界でも同様で、コーチングを学んだ医師・看護師・薬剤師・リハビリテーション技師などの医療従事者もたくさんいます。そして、そのような方々は、患者さんを早期に回復させたり、患者さんのアドヒアランスを高めたり、患者さんやご家族の満足度を高めるなど、様々な結果を出しています。
 薬剤師の世界では、コーチングは主に
 ・患者さんの疾患の理解を深める
 ・患者さんのアドヒアランスを高める
 ・患者さんやご家族が、病気に対して適切かつ前向きに向かい合うようになる
 ・病気に不安を感じても、それをうまく扱い、心の平静をスムーズに取り戻せるようになる
 ・処方元の主治医との関係が良くなり、疑義照会がやりやすくなる
 ・薬局内での人間関係が良くなり、チームや薬局として働きやすくなる
などの効果を発揮しているようです。

 多くの薬局では、患者さんや処方元の医師とのコミュニケーションに悩んでいます。
 患者さんとのコミュニケーションなら、薬剤師としては
 「きちんと用法・用量を守って、指示通りにお薬を服用してほしい」
 「薬や病気のことでわからないことがあったら、なんでも相談してほしい」
 などと思っています。

 一方患者さんとしては、その日の最後に受診する医療機関が薬局であることが多いので、
  「早く家に帰りたい」
  「病気や薬の難しい説明はいらないから、早く薬を出してほしい」
  「もっと安い薬はないのか?」
 などを思っています。薬剤師と患者さんがこのように認識や考えを違えていれば、患者さんに対する薬剤師の思いは伝わらず、服薬指導すらままならないでしょう。このような場面で効果を発揮するのがコーチングです。
  薬剤師にとってコーチングは様々な場面で役立ちますが、今回は患者さんとのコミュニケーションにおいて機能するコーチングをお伝えします。

 <患者さんとのコミュニケーション>

 服薬指導 → 患者さんの服薬コンプライアンスを高めるためには?

 服薬指導では、患者さんの価値観や疾病・治療そのものの理解などを踏まえて適切に主体的に服用してもらう必要があります。そのためには、患者さんが自身の感情の奥底にあるちょっとした不安なども全て持ち出してもらい、一つ一つの疑問を全て解消する必要があります。
また、患者さんには疾病や治療に対する誤解もあります。それらの誤解を解くためには、患者さんの思い込みを丁寧に解きほぐすことも求められます。この時は、コーチングで質問攻めになってしまわないような配慮が必要です。相手がスムーズにコミュニケーションできる状態になっているか?をコーチが適切に感じ取り、患者さんに合った話し方をすることが大変重要であると指摘していました。そのためには、コーチングの質問だけでなく、コミュニケーションのセンスを磨くトレーニングも必要だということでした。
それらを駆使することで、
・患者さんが処方箋通りに服薬するために、患者さんが服薬時に感じる不具合を解消できる
・難しい服用をわかりやすく説明できる
・起こるかもしれない副作用に対して事前に注意してもらうために、どのような症状が出たらすぐ医療機関に受診すべきかを伝えることができる
ようになり、患者さんの服薬コンプライアンスも向上するそうです。


 残薬の確認 → ご自宅の残薬を減らすためできることは?
 兼ねてから診療報酬改定・調剤報酬改定などのたびに取り上げられる話題の一つに残薬があります。
これは本来、患者さんの服薬コンプライアンスが高く、かつ、ポリファーマシーが防げていれば生じないはずです。ですが、実際には、患者さんのご自宅には薬剤が多数残っていることはよくあることです。
残薬の場合は、患者さんに悪気があってあちこちの医療機関を受診しているわけではなく、医療機関を受診した際、他の医療機関を受診していることを言えなかったりすることもあるそうです。でもそのような時は、主治医や薬剤師も忙しそうで、言うに言えなかったと言う患者さんが多いとのことでした。このようなことを防ぐためにも、薬剤師は患者さんご本人に対し、「なぜ自宅に薬が残っていないかを尋ねているのか?」をきちんと理解してもらい、その上で薬剤の服用のためのコーチングをすることが重要です。


 医療用医薬品以外に服用しているサプリメントの確認 → なぜサプリメントに注意が必要か?
 医療用医薬品の値段を気にするが、サプリメントは高額であっても購入する患者さんやご家族はたくさんおられます。特に難治性疾患・希少疾患などは、藁にもすがる思いで「治るなら何でも飲む」と言う患者さんやそのご家族は未だに後を絶たないそうです。
私がお話を伺った薬剤師の方も、そのようなご経験はたくさんありました。薬剤師としては、
「治療の選択肢が少ない患者さんならば、その意向を無視して、無下に服用中止させることは難しい。だが、服用中の薬剤との相互作用で副作用が発現する可能性はきちんと伝えなければならない。このような患者さんは『薬は組み合わせて飲めば、より効果を発揮する』と言う思い込み(パラダイム)を持っているので、そこにダメ出ししても患者さんの自発的な取り組みは起こらない。患者さんをその気にさせる質問や関わり方が重要だ。」
とのことでした。


このように、勉強熱心な薬剤師の方々は、コーチングも駆使しながら、患者さんとの効果的なコミュニケーションを行い、患者さんの治療成績を向上させる取り組みをしています。私が参加している日本医業経営コンサルタント協会の研究会の調査では、薬剤師全体のかなではコーチングを学んでいない薬剤師が多数を占めているのですが、一方ではこのように勉強している薬剤師も増えてきました。
また、上記の内容は「患者さんと薬剤師」がメインでしたが、これは「DrとMR」の関係でも言えることですね。
長くなってしまいましたので、薬剤師がコーチングスキルを駆使する場面の一つである「薬局内のスタッフ間のコミュニケーション」は、次回お伝えいたします。

 

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