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第35回 薬剤師の本業を再考する
2020/05/29

第35回 薬剤師の本業を再考する
今回は、「薬剤師の本業を改めて見直す」ことを目的として、薬局での対面業務への取り組みを皆様と一緒に見てまいります。
◆今回のテーマの背景
これまで本コラムでは、厚生労働省が薬局に求める『地域包括ケアシステムの中でのかかりつけ薬局の機能』や、
それに伴う診療報酬改定でのポイント等をお伝えしてまいりました。
しかしながら、実際の薬局の変化は一部の薬局のみで見られています。
服薬指導を丁寧に行う薬剤師や、処方元の医療機関の医師と信頼関係を築けている薬剤師などは、まだまだ限定的です。
多くの薬局では、従来通りの対面業務が続いています。
この状況は、薬局を利用する患者さんの不満につながり、患者さんが薬局を変えるなども起こっています。
厚生労働省も薬局に対しては、地域の安心・安全を守るゲートキーパーとしての機能を期待しております。
その役割をきちんと果たしている薬局は、診療報酬上でも様々な加算が認められています。
これらのことを踏まえれば、国が薬局に求めている姿に近づくほど、薬局経営が安定すると考えられます。
ところが、現実にはそうはなっていません。
むしろ近い将来、生き残り薬局となくなる薬局にはっきり分かれるかもしれません。
◆最近伺う薬局に対する患者さんの不満
たまたま偶然かもしれませんが、私の周りで薬剤師に対する不満を最近立て続けに聞くことがありました。
ある患者さんは、
「薬局に行って薬をもらう時、薬についてとか、飲み方などについて何も説明してもらっていないのに、服薬指導のお金を支払わされる。全く納得いかない。今後は、薬局を変える。」 とこぼしていました。
その患者さんは医療業界に精通している方で、診療報酬にも詳しいので、薬局での服薬指導の不備に気付けたのです。
その患者さん曰く、
「その薬局の薬剤師は、お薬手帳を確認せず、シールの貼り付けや服薬指導内容や特記事項等のメモ書きなど、何もしない。お薬手帳の意味が乏しい。」
「その薬剤師の服薬指導は、こちらから『薬を飲む時、何か注意することはないんですか?』と聞かなければ、薬の飲み方を説明しないし、薬の飲み忘れの有無の確認もない。これで薬剤管理指導料だけが請求される。これはおかしい。」 とのことでした。
その患者さんのいう通りです。
そして、同様のことは私たちも経験しているのではないでしょうか?
◆新卒の薬剤師のお話
次はベテラン薬剤師から伺ったお話です。
そのベテラン薬剤師が経営する薬局に、新卒の薬剤師が4月に入職しました。
その新卒の薬剤師がカウンターで患者さんから処方箋を受け取り、すぐさまピッキングし始めようとした際、隣にいたベテラン薬剤師があることに気付きました。
ベテラン薬剤師が気付いたのは、処方箋の有効期限切れでした。
その処方箋は交付日から5日経過したものだったのです。
そのことに気付いたベテラン薬剤師は、すぐに新人薬剤師に
・処方箋の有効期限が切れていること
・この処方箋では調剤できないこと
・患者さんに主治医を再度受診して、もう一度処方箋を発行してもらってきて欲しいこと
を説明するように指示しました。
ところが、その新人薬剤師は、患者さんに対してその説明が十分にできませんでした。
患者さんが
「なぜ処方箋に有効期限があるのか?」
「処方箋の有効期限が切れると、なぜ薬がもらえないのか?」
と質問したことに新人薬剤師は説明がしどろもどろになってしまい、結局患者さんが怒ってしまったそうです。
そこで新人薬剤師からベテラン薬剤師に交代し、上記の患者さんの質問に答えました。
すると、その患者さんは、
「仕事が忙しくて薬局に来ることが遅れた。」
「何とか薬をもらえないか?」
「また薬局に来ることが大変だ。今日何としても薬が欲しい。」
と何度も懇願したのですが、やはり処方箋の有効期限については如何ともできません。
そして
『このような状況では結局薬局では何もできない』
ということで、患者さんに理解してもらって帰っていただいたそうです。
この例は、新人薬剤師が処方箋の細かい点を見落としたことに端を発したお話です。
新人薬剤師は、学生の時の実習でも処方箋の有効期限について学んでいました。
ですが、そもそも
・処方箋に有効期限がある理由
・そのことを患者さんにご理解いただけるように説明する話し方
・これらを投薬時に常にこまめに説明する重要性
などは、患者さんの立場にならないと理解しにくいかもしれません。
この新人薬剤師は、O J T (On the Job Training) で服薬指導の大切なポイントを学んだと言えます。
◆これらのことから・・・
これらのお話から、冒頭にお伝えした
・患者さんが感じる薬局への不満
・患者さんが薬局を変える
などに至る背景が少し見えてきたかもしれません。
次回は、この点を更に深掘りして、どのようにすることでこのような状況を解決できるかを一緒に見ていきましょう。

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