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第19回 薬局の課題に関する調査③
2018/11/30

皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
今回も、現在の薬局の課題に関する話題を皆様と一緒に見てまいります。
今回ご紹介するデータも、ネグジット総研様の調査結果です。貴重な薬局の生の声を調査されましたので、前回に引き続きそのデータをご紹介いたします。
今回ご紹介するデータも、ネグジット総研様の調査結果です。貴重な薬局の生の声を調査されましたので、前回に引き続きそのデータをご紹介いたします。

確認として、今回ご紹介する調査の概要をお知らせいたします。


では、アンケートの質問4を見ていきましょう。質問4は「貴施設において、現在、「売上や経費に関わること」で重点的に取り組んでいる項目は何でしょうか?」でした。まさに薬局経営に直接関わる質問ですね。この質問に対して、下記のような回答が得られました。

売上を伸ばすには、「顧客を増やす」か「顧客一人当たりの売上単価を上げる」ことが必要です。
薬局で言えば、「患者さんの数(処方箋枚数)を増やす」か「調剤加算の算定を増やす」ということになります。
コストを下げるには、経営における資産の「人・モノ・金」の視点でみれば、薬局なら「人件費・医薬品費・消耗品費等の諸経費」を削減する必要があります。
この「売上を伸ばして、コストを下げる」ということを念頭におきながら上記のアンケート回答を再度見てみますと、薬局経営者は「薬局の売上の最大化とコストの最小化に取り組んでいる」と言えます。
従来から薬局経営が厳しくなることは、診療報酬改定・調剤報酬改定のたびに言われていました。
例えば、平成30年の診療報酬改定において、薬局グループ全体の処方箋枚数と処方箋集中率が高くなるほど調剤基本料1の41点 → 調剤基本料2の25点 → 調剤基本料3の20点へと、段階的に点数が下がるように改定されました。
そうなれば、「売上を伸ばして、コストを下げる」ことに力を入れざるを得なくなりますね。
以前報じられた「大手薬局チェーンによる不正保険請求」の事例は、この調剤基本料をより高く請求すべく不正をはたらいた、「売上を伸ばして、コストを下げる」ことが行き過ぎた事例だったとも言えます。
現在、処方箋の集中率も高く、50%以上の門前薬局等は7割を超えます(出典:財務省「平成29年度予算執行調査(総括調査票)」)から、これらの薬局の売上がどのように変化するか、要注意と考えられますね。
もし、このような薬局がかかりつけ薬局の施設基準を満たすべく様々な取り組みを推し進めて行けば、そのためのコストもかさむからです。
今回のアンケート結果を拝見しますと、
・メイン医療機関の処方せん枚数の増加
・メイン医療機関以外(広域等)の処方せん枚数の増加
・在宅患者の増加
・技術料単価の増加(各種加算の算定など
などの「売上を上げる」取り組みに各薬局が力を入れていることがわかります。
さらに、
・医薬品の在庫削減
・残業削減
の支持が高いことも併せて考えれば、今後薬局が
・後発医薬品調剤体制加算の取得を目的とした、先発医薬品から後発医薬品への切り替え
・医薬品の過剰在庫の削減
に力を入れることは間違いと見られます。
これは、処方箋枚数の増加を目指すよりも、上記の「後発医薬品への切り替え」「過剰在庫の削減」は薬局がすぐに着手できることで、かつ確実に効果が上がることが見込めるからです。
薬局がこのような厳密な在庫管理を行うようになると、製薬企業の医薬品の売上が減少するかもしれません。
これまでのように自社製品のキャンペーンを展開したり、期末に薬局に自社医薬品の購入を依頼しても、今後は簡単には購入してもらえない可能性が高まります。無駄なコストを発生させたくないという意向が高まってきているのが今の薬局の経営者だからです。
次回以降も引き続き、このネグジット総研様のアンケート調査から、製薬企業様に直接関わりがある医薬品についてより深くみてまいります。

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