医薬激浪雑記 第12回 電卓de推計 「薬(約)剤費予測」

2017/02/01



 医薬激浪雑記 第12回 

 電卓de推計 「薬(約)剤費予測



  医療経済コラムニスト 尾濱 浩
 
 早いもので、もう2月です。旧暦「如月」(きさらぎ)の和名は、「衣(き)更(さら)着」です。春の訪れを感じるこの時期(新暦2月20日~3月20日頃)、寒さがぶり返し、衣を更に着るという意味です。先人もダジャレがお好きなようです。中国最古の辞書「爾雅(じが)」には、「二月爲如」(2月を如となす)とあります。「如」には、「従う」という意味があり、萬物の一つが動き出すと次々に従って動き出す、その状態と解されています。
新薬の薬価基準収載は2月、5月、8月、11月に行われます。「オプジーボ」の特例拡大再算定が2月に動き出しました。まさに「(毎年薬価改定が)2月を如となす」です。まさに、「(薬価引下げの)寒さがぶり返し、衣を更に着る」です。



 八卦良い

 日本人は、「八」という数字を好みます。「8」を横にすると「∞」になり、無限の末広がりです。八卦とは、古代中国神話に登場する伝説上の帝王「伏羲(ふっき)」が考案したとされる易で、自然界の現象を8つの象に分類したものです。
新年度を迎える前に、2017年度の薬剤費を予測してみます。しかし、この時期の市場予測は楽観的過ぎると「市場が見えていない」と批判されますし、悲観的過ぎると「モチベーションが下がる」と叱られます。中(あた)らずと雖(いえど)も遠からず、「八卦良い(はっけよい)」でいかがでしょう。土俵際ですが、勝負はついていません。まだ、「残った(のこった)」です。


▶ 当たるも2015年度推計値9.2兆円


 毎年薬価改定が現実になり、診療報酬改定との接点が断ち切られました。薬価改定財源は、お国(財政再建)のために供出することになります。
厚生労働省がお国のために供出した「2015年度薬価本調査(2015年9月取引分)」の結果によると、2015年度薬剤費は約9兆2000兆円です。概算医療費(国民医療費の約98%)から算出した2015年度医療費は約42兆3000億円とみられるので、薬剤費比率は21.9%となります。本連載第1回目(2016年3月号)で、2015年度薬剤費の推計値を9兆2731億円と予測しました。実績値9兆2000兆円=推計値9兆2731億円、当たるも八卦です。

▶ 当たるはず2016年度推計値8.6兆円


 2016年度推計薬剤費8兆6425億円を当たるも八卦とみなすと、国庫負担から算出した2016年度推計医療費は43兆5456億円ですから、薬剤費比率は19.8%です。非改定年(中間改定年)には薬価引き下げのリバウンドが起こるので、2017年度推計薬剤費を電卓で推計するため、過去5回の平均乖離率を求めます。推定乖離率の年次推移は、▽2007年6.9%▽2009年7.88%▽2011年8.4%▽2013年8.2%▽2015年8.8%です。平均乖離率は8.036%となります。


▶ 当たるかも2017年度推計値9.3兆円

 仮に、8.036%のリバウンドが起こるものと仮定すると、8兆6425億円×1.08036=9兆3370億円、「オプジーボ」の薬価引下げ影響額▲760億円(国庫負担▲196億円)を差引くと、2017年度の推計薬剤費は9兆2610億円とみられます。予算案時点の2017年度推計医療費は44兆4097億円(前年度比8641億円増)ですから、2017年度の薬剤費比率は20.9%となります。






▶ 当たらぬも2019年度部分改定

 概算要求時点の2017年度推計医療費は44兆6910億円です。つまり、44兆6910億円(概算要求時点)-44兆4097億円(予算案時点)=2813億円減(国庫負担725億円減)となり、社会保障費の超過分1400億円のうち、725億円が医療費で圧縮されます。
2017年度予算案の社会保障関係費は32兆4735億円(前年度比4997億円増)と何とか5000億円の範囲内に収めましたが、国債費を除く政策経費は73兆9262億円(8200億円増)、国債発行を除く税収等は63兆849億円(7951億円増)、基礎的財政収支(PB)は▲10兆8413億円の赤字です。2020年度のPB黒字化目標が遠ざかります。
2019年度から適用される薬価部分改定では、医療費ベースで約3000億円、国庫負担ベースで約750億円の削減を前提に上限乖離率が調整されるかもしれません。もちろん、その延長線上には、薬価基準制度の廃止と新薬価制度の創設があります。当たらぬも八卦です。




執筆者プロフィール 

尾濱 浩(おはま ひろし)
1956年 広島県生まれ
1978年 関西大学経済学部卒業 食品業界専門紙記者を経て、流通情報専門誌の創刊に役員として携わる。
1991年 ユート・ブレーン入社。企画編集統括チーフとシニアコンサルタントを兼務。
2014年 フリーライターに転身。主に医療・医薬品業界の変化を独自の視点で切り取る執筆活動を行う。