医薬激浪雑記 第8回 電卓de推計 「1/47地域医療構想案」

2016/10/04



 医薬激浪雑記 第8回 

 電卓de推計 「1/47地域医療構想案



  医療経済コラムニスト 尾濱 浩
 
 昨年10月のお話ですが、あのケンブリッジ大学が教育学部に「レゴ研究センター」を新設しました。同研究センターでは、レゴ財団から400万ポンド(約7.7億円)の資金援助を受け、子供の教育・発達・学習における「遊び」の研究が進められています。レゴには、「正解」の組み合わせがありません。どれを使って、どんなものを作り上げるかは自由です。 LEGOの語源はデンマーク語の「よく遊べ」です。都道府県は「第7次医療計画」を使って、どんな2025年の地域医療構想(病床再編)を作り上げるのでしょうか。



 計画と目標

 下半期に入りました。そろそろ来期計画を作成する時期です。計画とは、「将来に対する意思」ですから、困難を受入れ、困難に挑み、困難に打ち勝つモチーフ(動機)が必要です。であれば、現在の延長線上で、達成可能な計画は、「予定」と呼ぶべきかもしれません。ですが、予定的な計画とは言え、いきなり100点は取れません。計画を達成する一つの手段は、少し努力すればできる予定的な目標を積み重ねることです。計画を時間で立てずに、量で立てることです。計画の遅れ(進捗状況)を具体的に把握できますし、挽回や修正が利きやすいからです。「第7次医療計画」(2018~2023年度)は、計画期間が5年から6年に延長されました。計画を量で立てずに、時間で立てたわけです。100点を取れるでしょうか。


▶ 計画を熟考する2017年度


 2018年度は、「第7次医療計画」「第7次介護保険事業計画」が同時に始動する年度であり、診療報酬改定と介護報酬改定が同時に施行する年度です。もちろん、2017年度は高齢化に耐え得る2025年の地域医療提供体制を構築する上で、計画が予定通り進むよう熟考する年度です。例えば、A県の担当官が政策課題に1日3時間取組む計画を立てたとしましょう。①多くの課題を解いた3時間、②1つの難題に苦労した3時間、③何も手が付かない3時間――。内容は異なりますが、時間は同じ3時間です。やはり、計画の立て方でしょうか、他県に先駆け、「地域医療構想案」をまとめた宮城県を取り上げてみましょう。

▶ 調整が必要な厚労省1/47スケールモデル


  宮城県の2013年4月1日現在の基準病床数(医療計画)は1万7174床です。この上限病床数に対して、現在(2015年7月1日現在)の既存病床数は1万9837床(無回答578床を除外)、2663床の過剰です。この上限病床数に対して、将来(2025年)の必要病床数(医療構想)は1万8781床、1056床の過剰です。もちろん、2025年の必要病床数は、厚生労働省の基礎データと算定方法による結果ですから、宮城県が自由に機能別病床数を積み上げた結果ではありません。あくまでも、厚生労働省の1/47スケールモデルです。そのため、宮城県では症状が安定した患者の中に退院が困難な患者が一定数いる実態を考慮して、慢性期や在宅医療の必要数を調整するそうです。
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▶ 「協議の場」を後押しする「改定の場」

 2次医療圏(構想区域)の機能別病床の増減数を調整する役割は、「地域医療構想調整会議」という名の「協議の場」に委ねられます。宮城県の場合、急性期の過剰病床が回復期に転換すれば、ほぼ必要数に近づきますが、ステークホルダー間の話し合いだけで「はい、分かりました」とは言わないでしょう。
病床再編より深刻な問題は在宅医療の供給不足です。中医協の2011年度調査によると、2011年6月現在の在宅療養支援診療所(在支診)1施設当たり在宅患者数は平均43.91 人です。しかし、鵜呑みにはできません。回答数が202施設に過ぎませんし、少々古い調査結果では、在宅患者が40人以下の在支診(平均9人)と40人以上の在支診(平均51人)に大きな偏りがみられるからです。仮に、その中間を平均26人とした場合、2012年時点の在支診が128施設に過ぎない宮城県では、2025年までに471施設を整備しなければなりません。開業医も高齢化しているので「はい、分かりました」とは言えないでしょう。
計画を達成する一つの手段は、予定的な目標を積み重ねることです。診療報酬改定の予定は、2018年度から2024年度まで計4回あります。



▶ 「案外」よりも「案の定」に備える

 「第7次医療計画」の目的は、2025年に急増する(かもしれない)入院医療費のリスクを在宅医療費と在宅介護費に分散することです。単純計算でも、後期高齢者1人当たりの入院医療費90万930円/月に対して、在宅医療・介護費は28万5950円/月(医療8万6670円、介護19万9280円)と、1/3に抑えられます。電卓上では、宮城県の場合、入院病床を1056床削減できれば、在宅病床を3168床確保できます。全国で15万床削減できれば、在宅病床を45万床確保できます。薬剤費も動きます。計画は「案の定」かもしれませんし、「案外」かもしれません。事業計画は、「案の定」に備えるべきです。




執筆者プロフィール 

尾濱 浩(おはま ひろし)
1956年 広島県生まれ
1978年 関西大学経済学部卒業 食品業界専門紙記者を経て、流通情報専門誌の創刊に役員として携わる。
1991年 ユート・ブレーン入社。企画編集統括チーフとシニアコンサルタントを兼務。
2014年 フリーライターに転身。主に医療・医薬品業界の変化を独自の視点で切り取る執筆活動を行う。