第33回 令和2年診療報酬改定と保険薬局

2020/03/31



 第33回 令和2年診療報酬改定と保険薬局 
 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
2020年4月に診療報酬改定が実施されました。
毎度のことですが、今回の診療報酬改定も見ておくべきポイントがたくさんありました。
今回の本コラムでは、今回の診療報酬改定における保険薬局に関わる当該箇所に絞って、保険薬局の現状をお伝えいたします。

 

◆令和2年の診療報酬改定における保険薬局に関わる箇所の確認


 まずは今回の診療報酬改定の内容と保険薬局について、確認していきましょう。 皆様令和2年3月5日版の『令和2年度診療報酬改定の概要(調剤)(以下「概要」)』をご覧いただきましたでしょうか? 私は今回の概要を、冒頭から保険薬局に対して厳しい現状と薬局(特に院外の保険薬局)への評価を突きつけた記載になっているという印象を受けました。 例えば、スライド4の中で調剤技術料が1.9兆円にも上ることが示されつつ、スライド6では • 現在の医薬分業は、政策誘導をした結果の形式的な分業であって多くの薬剤師・薬局において本来の機能を果たせておらず、医薬分業のメリットを患者も他の職種も実感できていない • 単純に薬剤の調製などの対物中心の業務を行うだけで業が成り立っており、多くの薬剤師・薬局が患者や他の職種から意義を理解されていないという危機感がない • 薬剤師のあり方を見直せば医薬分業があるべき姿になるとは限らず、この際院内調剤の評価を見直し、院内処方へ一定の回帰を考えるべきである という厳しい指摘が並びます。 本来、薬剤師の職能は、改正薬機法による定義だけでなく、地域の住民からの期待や地域の医療者および行政等からの期待にも答える必要がある、社会的意義のある職種のはずです。 にも関わらず診療報酬改定でこのような記述がなされるということは、現在の薬剤師のお仕事ぶりに多くの方が納得・満足しておらず、むしろ不満に思っているということの証拠かもしれません。 令和2年の日本の一般会計の予算が、102兆6,580億円である中(出典:https://www.bb.mof.go.jp/server/2020/dlpdf/DL202011001.pdf 36ページ)、調剤技術料が1.9兆円であること、そしてその調剤技術料が金額に見合った価値を患者さんに提供していると地域の患者さんや住民、医療者、行政等に認知・理解してもらえていないことは、保険薬局の薬剤師にとって痛恨の極みと言えるでしょう。 保険薬局の薬剤師の中には、地域のために、ご近所さんの健康を守る頼れる存在として取り組んでいる薬剤師も必ずいますので、そのような薬剤師にとっては、この診療報酬改定の概要の冒頭の文言は忸怩たる思いです。 ところが、残念ながらそのような薬剤師の人数は、薬剤師全体の中でも大多数とは言えない状況です。 むしろ、従来のまま患者さんが処方箋を持って来局してくれるのを待っているだけの薬局が、まだまだ多いようです。



◆なかなか変わらない保険薬局の薬剤師のマインド

 私が所属している日本医業経営コンサルタント協会の有志の勉強会では、保険薬局に対するコンサルテーションを研究しています。
その勉強会において、保険薬局がなかなか対応できない現状として下記の反応が薬剤師から出ているということが共有されました。

• かかりつけ機能の評価
 患者さんにとって『かかりつけ医』は徐々に浸透してきたものの、『かかりつけ薬局』は
 まだまだ浸透していない
 特に地方では患者さんの利便性を考えると、患者さんが受診した医療機関の門前薬局で
 薬をもらう方が、移動等の負担が少ないという声が患者さんから出ている
 かかりつけ薬剤師になるためにわざわざ同意書に署名したり費用がかかることに患者さんの
 理解が得られない
 地域医療体制加算を得たくても処方元の医師が非協力的で、疑義照会をすると露骨に嫌がったり、不機嫌に対応される

• 対物業務から対人業務への構造的な転換
 丁寧な服薬指導をしたくても、患者さんが薬をもらったらすぐに帰りたがる
 丁寧な服薬指導をすると、他の患者さんを待たせることになるため、手早く薬を渡さざるを得ない
 処方箋に検査結果が記述されていないので、患者さんが何の疾患を持っているのかの聞き取りが大変で、時間を要する

• 在宅業務の推進
 在宅医療への対応をしたくても、薬剤師の人手が足りない
 個人の薬局では、在宅医療への対応は、麻薬の管理等で設備投資が必要になると経営的に非常に難しい

• オンライン服薬指導への対応
 オンライン服薬指導は、患者さんがスマートフォンやパソコンに慣れていないと実現不可能
 オンライン服薬指導のための設備投資が必要だが、その費用の捻出が難しい

これらの意見は、今回の調査で明らかになったものは少なく、むしろもともと以前から指摘されていた薬剤師からの意見です。
一部のグループ薬局では薬剤師の業務を対物業務から対人業務に変えて行くべく取り組みがなされており、オンライン服薬指導の導入の検討という話も聞きます。
ですが、保険薬局の多くは個人の薬局であり、設備投資の予算も限られているため、診療報酬改定の概要に準拠したくても限界があるというのが実情です。


◆では、対人業務に変えて行くために、何をすれば良いのか?

 診療報酬で今後ますます対人業務への取り組みの評価がなされて行くことが間違いありません。
そのために何をすれば良いのか?
次回は、その点を一緒に見ていきましょう。




 以

 

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