第31回 保険薬局と病院は、患者さんの情報や要望をどこまで共有できているか?

2020/01/31



 第31回 保険薬局と病院は、患者さんの情報や要望を
     どこまで共有できているか?

 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 前回、MRが保険薬局に訪問した際、薬剤師と適切なコミュニケーションが図れないケースがあったり、それが広く薬剤師間に広まることがあることをお伝えしました。

 一方で、MRが保険薬局と病院・クリニックをうまく繋いでいる事例も聞きました。
今回は、そのお話を中心にお伝えします。 


 

保険薬局の薬剤師が感心したMR活動の事例

 先日、保険薬局の薬剤師に最近のMR活動やその評価などについてお話を伺っていました。 その薬剤師も
「MRが医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン(以下GL)の施行によって、併用薬や他剤との比較などデータを示せないものは、本当に教えてもらえなくなった」
とおっしゃっていました。
 しかし、 「先日、患者さんが薬局でお薬をもらう際、薬剤師に対してどんな質問をするのか?を尋ねてきたMRがいた」 という話を聞きました。 具体的には、そのMRは薬剤師に下記のような質問をしたそうです。

 1. 薬局では、患者さんからどのような質問をされることが多いか?
  それはどのような意図から薬剤師に質問されたのか?
 2. その質問の内容は、処方元の医師に伝えているか?


 上記のMRからの質問に対する薬剤師の回答をお示しします。

 1. 薬局では、患者さんからどのような質問をされることが多いか?
 <高齢の患者さんからの質問>
◉医師から処方される薬が多くて、飲むのが大変だ。
 ◉だが診察の際、医師に「薬が多すぎるので、毎回飲むのが大変だ」とは言えない。
 ◉薬をたくさん飲まなければならなくなってから、体も疲れやすい感じがする。
 ◉1日3回飲む薬と1日2回飲む薬と1日1回飲む薬があるので、飲み忘れや飲み間違いがある。
 ◉ずいぶん長く薬を飲んでいるが、前とあまり変わらない気がする。
  症状が良くなっている実感がない。血圧や血糖値も変わっていない。それでも薬を
  飲まなければいけないのか?
 ◉このような質問が医師に尋ねられない。医師がいつも忙しそうで気がひける。
  医師が自分の話を聞いてくれる感じがしない。

  <働いている患者さんからの質問>
◉働いている最中に診察を受けたり、薬局で薬をもらう時間を取ることが難しい。
  医師への診察が必要なのはわかるが、薬はもっと長い日数分を処方してもらえ
  ないのか? 
 ◉病院や薬局が空いている時間には受診やお薬をもらうことが難しい。
  もっと遅い時間まで診察や調剤をして欲しい。

 2. その質問の内容は、処方元の医師に伝えているか?
◉全ての患者さんからの質問を処方元の医師全員に伝えることは難しい。
  疑義照会すら良く思わない医師もいる。
 ◉疑義照会に快く対応してくれる医師には、患者さんからの質問を伝えることはある。 ◉患者さんからの質問は、医師と患者さんが診察室の中で話し合うことで解決できる
  質問ばかりだ。そもそも、医師と患者さんのコミュニケーションがきちんと取れて
  いないことが問題だ。 
 ◉病院を受診後の患者さんの処方箋から、「おそらくこの患者さんは3~4つくらい
  の病気を持っているな」ということは想像がつく。だがそれらの処方の設計が診療科 
  個々には良いのだが、複数の診療科を受診した際、薬が増えすぎてしまう。そのこと
  をチェックできる機能が病院にはない。保険薬局からも1人の患者さんの質問に何人
  もの医師に患者さんから質問があったことを知らせるのは非常に手間がかかる。
 ◉患者さんがお薬手帳を持ってくれれば結構解決できることがある。でもお薬手帳が
  なかなか患者さんに広まらない。薬局ではお薬手帳を患者さんに持ってもらうよう
  説明しているが、医師からもお薬手帳を患者さんに持ってもらうよう話して欲しい。
  お薬手帳をきっかけに患者さんと話せることがたくさんあるはず。

 この薬剤師の回答をご覧いただいた皆様は、いかが思われたでしょうか?



◆患者さんと薬剤師のニーズに、どこまで応えうるか?

 GLで制限される情報提供活動の対象は医療用医薬品ですが、それ以外の情報提供については、各製薬企業が独自に社内ルールを設定して運用しているようです。企業によってはMRが担当する医師の関係する学会の話題も、MRに対してディテーリングや面談時に触れないように制限している企業もあります。
 この辺りは企業の判断に依りますのでこれ以上触れませんが、「患者さん・薬剤師・医師のニーズ」を踏まえた何らかの支援は、患者さんとご家族、医療者への貢献になり得ます。
 私が医業経営コンサルタントとして病院の医師と面談する際、患者の診察の場面が話題になることがあります。
 その経験を踏まえて、一般 論として申し上げますと、医師は診察の場面で、患者さんまたは患者さんのご家族からの限られた情報の中で診断し、治療方針を決定し、経過を観察しています。
 逆に言えば、医師は患者さんや患者さんのご家族から情報が得られなければ、患者さんを適切に診療することができないとも言えます。 一方の患者さんやご家族は、医師を受診する際にいつもの落ち着いた自分自身ではいられないことが多いです。
 患者さんが苦痛であったり、意識がなくなったりしていれば、取り乱すこともあります。
 そのような時、医師に患者さんの状況を冷静かつ正確に説明することは極めて難しいことです。

 また、患者さんがご自宅に戻ってからの日常生活についても、医師は知り得ません。
 ご自宅の中での患者さんの様子はどうか、指示通りに服薬ができているか、いつもと変わったことはないか、食事は適切な量で適切な栄養を摂取できているかなど、医師にとっては極めて重要な情報であっても、限られた診察の時間内では、患者さんもご家族も医師にそれらの情報をきちんとお伝えできないことが多々あります。
 さらには、患者さんやご家族は、医師に対して遠慮してしまい、自分たちの希望を医師に伝えられずに診察を終えてしまうことがあります。
 これは、患者さんやご家族が以前医師を受診した際、自分たちの希望(例えばセカンドオピニオンを受けたいなど)等を伝えたところ医師の機嫌を損なってしまい、患者さんが満足の行く診療をしてもらえなかったという思いがあるときに、医師に対して遠慮してしまうことがあるようです。
 したがって、医師の診察後に患者さんやご家族が「あ、あのことを言い忘れた」「言いたいことがあったけど、言い出せなかった」と思うことはたくさんあります。 医師側にも十分改善すべき点があるのですが、このようなコミュニケーション不全は患者さんの不利益に直結します。
では、どのようにすればこの問題を解決できるでしょうか?
その時、MRはどのようにサポートできるでしょうか?
次回はその点を一緒に見ていきましょう。



 

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