第30回 ガイドライン前後の製薬企業の情報提供について⑥

2019/12/09


 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 前回まで、下記の通り2019年4月1日以降から施行されました、医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン(以下ガイドライン)についての薬剤師向けの調査結果を一緒に見てまいりました。

前回までで一通りアンケート結果の全てをご紹介しつつ、解説を加えましたが、薬剤師からの回答に
・欲しい情報がMRから得られなくなってきた
・ガイドラインによってMRが情報提供しにくくなっている
などの指摘が大変多く散見されました。

また、先日私が製薬業界のクローズドの会合で講演する機会を得たのですが、その中でほとんどの製薬企業がこのガイドラインによって、MRが提供可能な情報が制限されていることに頭を悩ませていました。

そこで今回の本コラムでは、ガイドライン下でも提供可能な情報を再度見直してみます。


 

ガイドライン下で提供できる情報の範囲


今ガイドラインの「第1 基本的考え方」の「3 販売情報提供活動の原則」に下記の記述があります。

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第68条の2に基づき、医療用医薬品の適正使用のために必要となる情報提供(添付文書に記載された禁忌に関する情報提供、医薬品リスク管理計画(RMP)に関する情報提供等)を適切に実施すべきであることに留意すること。その上で、販売情報提供活動を行うに当たっては、次の(1)から(3)までの規定を遵守すること。
(1)販売情報提供活動は、次に掲げる要件を全て満たすものであること。
①    提供する医療用医薬品の効能・効果、用法・用量等の情報は、承認された範囲内のものであること。
②    医療用医薬品の有効性のみではなく、副作用を含む安全性等の必要な情報についても提供し、提供する情報を恣意的に選択しないこと。
③    提供する情報は、科学的及び客観的な根拠に基づくものであり、その根拠を示すことができる正確な内容のものであること。その科学的根拠は、元データを含め、第三者による客観的評価及び検証が可能なもの、又は第三者による適正性の審査(論文の査読等)を経たもの(承認審査に用いられた評価資料や審査報告書を含む。)であること。
④    販売情報提供活動の資材等に引用される情報は、その引用元が明記されたものであること。また、社外の調査研究について、その調査研究の実施や論文等の作成に関して医薬品製造販売業者等による物品、金銭、労務等の提供があった場合には、その具体的内容も明記されたものであること。なお、社外の調査研究については、「臨床研究法」(平成29年法律第16号)、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成26年文部科学省・厚生労働省告示第3号)その他これらに準ずる指針等を遵守したもののみを使用すること。

ここで「添付文書に記載された禁忌に関する情報提供」、「医薬品リスク管理計画(RMP)に関する情報提供等」という文言が出てきます。
添付文書に書いてある情報提供は、どこの製薬企業でも実施しています。
一方、RMPに記載されている情報を積極的に提供している製薬記号はどれくらいあるでしょうか?



RMPの取り組みは、製薬企業によってバラバラ


 RMPへの取り組みは、製薬企業によってバラバラです。
RMPは2013年4月から施行されました。これ以降に上市された新薬は全てRMP対象です。
RMP対象医薬品の情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html)で確認可能です。
これを拝見すると、RMPがどのような内容で市販後の副作用情報等を収集しているのかがわかります。
また、その更新頻度や内容等もわかります。
ですがこの情報を、MRを介して医療機関に届ける活動をどれくらい確実に実行しているかとなると、製薬企業によってだいぶ異なるようです。

薬剤師に尋ねると、
・RMPに準拠した情報提供活動は、あまり見ない
・MRにその製品のRMPのことを尋ねても、MRが答えられない
などの意見を伺います。
MRや製薬企業がRMPに基づく情報提供活動をしても、薬剤師にはそのように受け取ってもらえていないようです。



製薬企業のRMPの活動は、なぜ薬剤師に伝わらない?



 製薬企業のRMPに準拠した活動が薬剤師に伝わらないのは、MRや製薬企業が副作用情報に対して誤解しているからかもしれません。

私は以前、製薬業界の安全性情報を扱う部署の方々向けに講演したことがあります。
その際、私から「安全性情報部が持つ副作用情報を多くの医療者にきちんと伝えれば、もっと自社の医薬品が売れるようになる」とお伝えしました。
その時、その部署の皆様が全く理解できないといった表情で私の話を聞いていたのが、印象的でした。
皆様が「副作用情報を伝えたら、自分のところの製品が処方されなくなるのではないか?」という誤解をお持ちだったのでした。


なぜ副作用情報を医師に伝えると、医薬品が処方されるのか?


 なぜ、副作用情報を医師に伝えると、お薬品が処方されるようになるのでしょうか?
それは、副作用情報やその対策方法を医師に伝えるほど、医師はその医薬品を処方しやすくなるからです。

医師は、どのような副作用が出るのかが分からない医薬品、副作用の対処法が分からない医薬品ほど、敬遠します。
そのような医薬品を患者さんに処方して、何か不具合が起こったら、その責任は医師にあります。
ですから、医師はそのようなリスクを冒すくらいなら、従来から使い慣れている医薬品を処方します。

私の知り合いの医師でも、
「高齢者向けに薬剤を処方する時、粉砕投与や一包化で処方することがある。その時に粉砕投与もできない使いにくいめんどくさい薬剤は、使わない。」
と明言する医師が多いです。

このように、医師が薬剤を選択する際には、重要な条件として「使いやすさ」もあるということです。
しかしながら、この点に気づき、「自社医薬品の使いやすさ」を懇切丁寧に説明するプロモーションや情報提供活動をしている製薬企業は、あまり聞くことがありません。
もしかすると、これが思うように売上が伸びていかない一因かもしれませんね。

このように、医薬品の適正使用情報、副作用情報を医療者にただお届けするのではなく、伝える意図・目的を明確にして活動することをお勧めします。

次回は、このRMPや副作用情報をMRが医師・薬剤師にお伝えする際に、あったら活動しやすくなる仕組みを一緒に考えてみましょう。

 

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