第29回 ガイドライン前後の製薬企業の情報提供について⑤

2019/11/06


 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 今回も、ガイドラインの施行前後における薬剤師による製薬企業への評価を比較検討してみます。
 この検討によって、製薬企業の医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(以下ガイドライン)への対応がうまく行っているのかどうかが検討可能になることでしょう。
データはネグジット総研様が実施されたアンケート結果です。アンケート名は「ガイドラインに関する調査」です。
 本アンケートは、ガイドラインの施行後2ヶ月以上経過した時点で実施されました。
この結果から、ガイドラインに準拠したガイドライン対応としてどのようなことがポイントになるのかを検討してみましょう。


◆今回の調査について

今回ご紹介する調査の概要をお知らせいたします。
調査名:「ガイドラインに関する調査」
サンプルサイズ:468名(保険薬局勤務 294名、病院勤務 174名)
調査期間:2019年6月21日~27日
調査方法:WEBアンケート
調査実施機関:(株)ネグジット総研 薬剤師調査MMPR


◆ 2019年6月1日以降の各製薬企業の情報提供活動の状況

 今回のアンケートの3つめの質問は、「2019年4月以降、医薬品情報の入手等で変化を感じていることや困っていることがあれば教えてください。」です。この質問には、回答全体のうち197のコメントが寄せられました。
 そのコメントを集計用にラベリングし、グラフ化したものが、下記のグラフです。
 

このグラフからは、主に
1.    MR個人の資質や活動を除く、製薬企業の組織としての活動に対する不満
2.    MR個人の資質や活動に由来すると考えられるものについての不満
が見て取れました。

特にガイドラインの施行に伴い、製薬企業もMRも活動が限定的になり、薬剤師からの「投薬時の薬剤の粉砕投与の可否」や「一包化の可否」といった実務上の疑問に対し、製薬企業のコールセンターやMRが添付文書通りの回答しかできなくなっていることに不満を持っている薬剤師が過半数見受けられます。

確かに安全性を担保するなら添付文書に則って薬剤を投薬することが望ましいのですが、とはいっても患者さんからの要望で薬剤の粉砕投与や一包化の指示が医師から出ることも日常茶飯事です。
このガイドラインに準拠した処方箋の発行や投薬について私の知り合いの医師・薬剤師に感想を伺ったところ、下記のようなコメントもいただきました。

<医師>
  • 一包化も粉砕投与もできない薬剤なら使わない。
  • 高齢者の患者さんの多くは「一包化された薬剤だと飲み忘れが少ない」、「錠剤のま
    まだと飲みづらい」と言われるから、一包化や粉砕投与を指示している。それが理解
    できないという製薬企業の活動こそ、医師として理解できない。
  • 新薬には粉砕投与不可の薬剤が多いが、医療現場を知っていれば治験の時から散剤の
    剤型も検討すべき。散剤を好む高齢者もいるし、人数も多い。
  • 古い薬剤には粉砕投与可能なものもあるので、自然とそちらを処方することが増えて
    いる。当たり前のこと。
  • 粉砕投与も可能な古い薬の良さが明確になった。安くて使い勝手も良いものを処方す
    るのは、患者さんに撮ってもメリットがあるし、医師も使いやすい。
  • なんでも新薬なら良いというわけではない。•    ガイドラインの趣旨は分かるし、正
    しい情報を医療者に届けることは重要。でも薬剤の使い勝手の良さは損なわれている
    ように思う。
  • ガイドラインを徹底すれば、医師が直接欲しい情報を自分で探すようになるため、
    MRはますます不要になるのではないか?でもその結果薬剤が安くなるなら、その方
    がもっとメリットが大きい。
  • 医師としては、薬剤について知りたいことを他の医師に聞くようになった。
<薬剤師>
  • 一包化できない新薬の処方箋を持って来局される患者さんが多いが、併用薬が一包化
    可能で、医師が一包化を指示していると、投薬の際新薬の扱いに非常に困る。新薬だ
    け一包化できず、PTPシートのまま渡さざるを得ない。患者さんへの説明も非常に難
    しい。患者さんの不満が高まる。
  • コールセンターに問い合わせても、添付文書に書いてあることしか話せていない。
    これなら自分でネットで調べるのと同じこと。
  • 製薬企業やMRに尋ねるのではなく、自分で調べたほうが早いことがある。
  • 薬について患者さんからの問い合わせを受けるのは主に薬剤師。ガイドラインに
    よって患者さんの不満が増えないことを望む。
  • 薬剤師の大変さを、製薬企業もMRも、もっと知ってほしい。
  • 患者さんに渡す指導せんがもらえなくなり、服薬指導が面倒になった。
  • ガイドラインは患者さんの不利益になっていることが多いのではないか?
  • 患者さんにとって有益なガイドラインに変わることを望む。
  • 誰のための医療なのかを、もっと真剣に考えてほしい。
 これらの声は、厚生労働省に届ける必要があるかもしれません。実際に、私の知り合いの医師の何人かが厚生労働省にガイドラインの改定を申し入れています。

 しかし一方で、ガイドラインの施行の経緯を鑑みれば、まずは製薬企業が襟を正さざるを得ないかもしれません。
その上でガイドラインの内容の再考を厚生労働省に求めるのが筋と考えられます。




薬剤師がガイドラインを知らないことで生じている誤解?

 ネグジット総研のアンケートのコメントを見ると、薬剤師のわがままとも取れるコメントも散見されました。

例えば
•    販促品や資材の提供がなくなった
•    弁当付きの説明会がなくなった
などは、従前の製薬企業のプロモーションの傷跡とも言えるコメントの代表でしょう。

 このようなコメントが医療者から出てこない、健全な取引が望まれます。
そのためには、製薬企業側から将来あるべき情報提供の姿を医療者に明示し続ける取り組みも必要でしょう。
 「金の切れ目が縁の切れ目」ということにならないように、正しいことを正しく取り組み続けることと、断固たる決意を活動のコアバリューとすることが、これからの製薬企業のプロモーションに欠かせませんね。

 

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