第27回 ガイドライン前後の製薬企業の情報提供について②

2019/07/31


 
 第27回 ガイドライン前後の製薬企業の情報提供について②

 皆
様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。

 今回も、ガイドラインの施行前後における薬剤師による製薬企業への評価を比較検討してみます。そのことで、製薬企業のガイドライン対応がうまく行っているのかどうかが検討可能になることでしょう。
 データはネグジット総研様が実施されたアンケート結果です。アンケート名は「薬剤師対象販売情報提供活動ガイドライン現状確認調査(3月時点)」です。
この結果から、ガイドライン対応としてどのようなことがポイントになるのかを検討してみましょう。


◆(再掲) 今回の調査について


今回ご紹介する調査の概要をお知らせいたします。


調査名:「薬剤師対象 販売情報提供活動ガイドライン 現状確認調査(3月時点) ― 7社比較 ―」
サンプル数:薬剤師200名(薬局勤務100名、病院勤務100名)
調査期間:2019年4月18日~30日
調査方法:WEBアンケート
調査実施機関:(株)ネグジット総研 薬剤師調査MMPR

◆ 2019年1月~3月末までの各製薬企業の情報提供活動の状況

このアンケートでは、製薬企業7社の医薬品の情報提供活動で、実際にあった不適切な情報提供活動として疑われるケースの有無を確認しました。


<薬局向け>(複数回答あり サンプル数100)
カテゴリ 最小値 最大値
情報を求めていないが「承認外の効能・効果、用法・用量等の情報」があった 0 4
安全性の情報不足など、恣意的な情報だった 0 3
科学的・客観的な根拠に基づかない、不正確な情報だった 0 1
資材等に引用された情報に、引用元が明記されていなかった 0 3
資材等に引用された社外の調査研究に、伏せられた製薬企業の関与があった 0 1
すべて該当なし 91 100
その他 0 4


<病院向け>(複数回答あり サンプル数100)
カテゴリ 最小値 最大値
情報を求めていないが「承認外の効能・効果、用法・用量等の情報」があった 1 3
安全性の情報不足など、恣意的な情報だった 0 3
科学的・客観的な根拠に基づかない、不正確な情報だった 0 1
資材等に引用された情報に、引用元が明記されていなかった 0 1
資材等に引用された社外の調査研究に、伏せられた製薬企業の関与があった 0 1
すべて該当なし 94 100
その他 0 1


◆ 今回の質問の結果から見直すべきことは?

 今回の質問の結果からは、大きくは2つの改善すべきポイントがあります。
 1つはMRが、もう1つは製薬企業の本社です。
 1つ目のMRの改善ポイントの例を、下記に示します。

 
●承認外の効能・効果、用法・用量等の情報は提供しない

 
→ オフラベルの情報提供は、問題がない情報提供のプロセスを経てなされるべきです。MRが自ら率先して医療者に提供することは日本の医療制度に対しても不適切です。
もちろん医療者からの質問で医薬品の海外での使用状況や、日本で認められていない効能・効果、用法・用量を尋ねられることがあります。
例えば大学病院などで高度な情報を必要とする施設の医療者や、来院する外国人患者さんに対して医療を提供する場合は、従来の適正使用情報では不十分というケースもあり得ます。このような場合は、製薬企業各社が制定したしかるべきプロセスで情報提供すべきです。
多くのMRや製薬企業は実践できていることだと思われますが、薬剤師から見て「不適切」と思われる指摘がまだ0件ではないということは、憂慮すべきことでしょう。



●安全性に関する情報は最優先で医療者に提供する

→ これも当然の活動です。
しかし、ほとんどの製薬企業とMRは、安全性の情報提供よりも有効性のディテーリングを重視する傾向があるように見て取れます。
何故ならば、これらの不適切な情報提供をしてしまう背景には「高い有効性の医薬品の方が売れる」「有効性を訴求しなければ、医療者から自社医薬品を処方してもらえない」などの誤解があるからです。
しかもこの誤解は製薬企業の本社から現場の末端に至るまで、隅から隅まで広く深く浸透しています。製品戦略も基本的には差別化戦略ですし、他剤と比べてどこがどのように違うのかを説明する製品メッセージがほとんどです。

しかしながら、薬剤師や医師に直接話を伺うと、医薬品の処方の決め手になるのは有効性よりも先んじて
「安価である」
「期待通りの効果が発揮される」
「副作用があっても対応がしやすい」
「使い慣れている」
「使い勝手が良い」
「Evidenceがある」
などの話が出てきます。頻繁に聞きます。この点を理解できている製薬企業はどれくらいあるでしょうか?
医薬品の安全性に関する情報は、上記の「使い慣れている」「使い勝手が良い」という点に密接に関わる情報です。
この情報提供なしに、その医薬品が医療者にとって汎用される使いやすい医薬品のポジショニングを得ることはないでしょう。
そして、そのポジションが得られない医薬品は、汎用されることもないでしょう。


 
●科学的・客観的な情報

→ これも当たり前のことですが、医療用医薬品の適正使用には科学的に検証されたEvidenceに基づいて適切になされなければならないことは、私が言うまでもないことです。
ですが、今回のアンケート結果からは、未だに不適切なMR活動が散見されることが明らかになりました。大変残念なことです。
この背景の中には、医師からの質問には科学的・客観的な説明が難しい質問も含まれることも考えられます。
MRにとっては、医師からの「この薬については、○○先生はどう言っているの?どう言う感触を持っているの?」などの質問は、身近によくありがちな質問の一つです。ですが、このような質問に対しての準備はあまりなされているように聞きません。
これでは準備不足の上、不適切なMR活動と指摘されてしまうことは容易に想像がつくことでしょう。
しかし、このような現状の原因には本社の取り組みも深く関わっていますね。
私が製薬企業の本社の管理職の方々にMRの現場での対応状況を伺うと、「現場ではちゃんと対応できていない」、「でも本社のその対応をきちんとできていない」と言う声が多いです。医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインはすでに2019年4月1日から施行されているのに、この状況は憂慮すべきことかもしれません。


 
次回はこの続きとして、本社やプロダクトマネージャーの対応の不備について一緒に見ていきましょう。

 

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