第16回 薬局に対する地域支援体制加算等の影響

2018/08/31

 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 
  今回は、平成30年診療報酬改定以降の保険薬局の取り組みの現在をご紹介します。
  診療報酬改定のたびに、地域における保険薬局の機能や提供している価値とコスト
 が注目されますが、実際のところ保険薬局側はどのように考えているのでしょうか?
 この点を見ていきましょう。





 8月に私が所属する医業経営コンサルタントの会合がありました。そこで保険薬局の
現状が共有されました。
その会合において、下記のような指摘がありました。


 

 平成30年診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師が行う指導料や管理料などの点数が引き上げられました(例:かかりつけ薬剤師指導料は70点が73点に引き上げ。かかりつけ薬剤師包括管理料は270点が280点に引き上げ。)。
しかし、かかりつけ薬剤師になるための要件は見直され、当該保険薬局に6ヶ月の在籍から1年以上在籍していることとされました。

 さらに、かかりつけ薬剤師が機能を発揮し、地域包括ケアシステムの中で地域医療に貢献する薬局について夜間・休日対応等の地域支援の実践等を踏まえた評価として「地域支援体制加算 35点」が新設されました。
これが非常にハードルが高く、11の施設基準のうち、特に下記の4つは施設基準のクリアが難しいです。

 (1) 地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績*
   *1年に常勤薬剤師1人当たり、以下のすべての実績を有すること
     ① 夜間・休日等の対応実績            400回
     ② 麻薬指導管理加算の実績             10回
     ③ 重複投薬・相互作用等防止加算等の実績     40回
     ④ かかりつけ薬剤師指導料等の実績         40回
     ⑤ 外来服薬支援量の実績             12回
     ⑥ 服用薬剤調整支援料の実績              1回
     ⑦ 単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績     12回
     ⑧ 服薬情報等提供料の実績             60回
    
 調剤基本料1を算定している保険薬局については、下記の基準をすべて満たすことと
し、(1)を適用しない。
  ① 麻薬小売業者の免許を受けていること。
  ② 在宅患者薬剤管理の実績を有していること。
  ③ かかりつけ薬剤師指導料等に係る届出を行っていること。
 (6) 薬学的管理・指導の体制整備、在宅に係る体制の情報提供
 (10) 医療安全に資する取組実績の報告
 (11) 集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合50%以上

 保険薬局が地域支援体制加算の施設基準をクリアしようとすれば、前述の(1) 地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績を満たす必要があります。
 前述(1)であれば、夜間や休日への対応や在宅薬剤管理が必要になりました。これに対応するには薬剤師の人数が必要です。場合によっては、薬剤師の更なる採用も必要になります。これはある程度の規模の薬局でなければ、簡単に対応することは難しいです。個人経営の薬局であれば、跡継ぎを加えて家族で薬局を経営すると言う手もありますが、すべての薬局で対応できるわけでもありません。

 ここまでを見て、薬局が上記の基準を全てクリアするのは非常に難しいことが一目瞭然でしょう。
 厚生労働省は、前回の平成28年診療報酬改定から提供した医療のアウトカムを重視するように舵を切っていますが、今回の平成30年診療報酬改定では、それをさらに推進する意図が見て取れます。
 今回の地域支援体制加算は、まさに保険薬局が取り組んだ実績を評価するということですから、近隣の医療機関からの処方箋をただ待っている保険薬局では施設基準を満たすこと自体が非常に難しいでしょう。実際に、この加算取得を諦めている保険薬局は、たくさんあります。

 厚生労働省が実現したい地域における保険薬局の姿は良くわかりますが、保険薬局から見て実現可能性が低ければ、いくら点数が取れてもそれ以上の薬局業務の負担になるようなら、保険薬局は従来のまま、仕事ぶりを変えることは考えにくいでしょう。





 医療における薬局の役割は、今後も重要であり続けることは変わりありません。ですが、薬局に求められる機能がより高度化したり、機能そのものが増えることも予想されます。そしてそれらがきっかけで、薬局のM&Aが増えることも考えられます。

 医療機関向けのM&Aを手がける会社によれば、ここ5年くらいの間、医療機関のM&A件数が続伸しているとのことです。現在は病院のM&Aが多いようですが、薬局も増えていることが明らかです。調剤薬局グループの傘下に入ることで、(1) 地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績*を示す際の人的・経済的な負担等を軽減することが可能になります。また、製薬企業や医薬品卸に対するバイイングパワーも強化でき、より有利な条件の納入価の契約が期待できます。これらが薬局側にとっては非常に魅力的なので、薬局のM&Aはまだしばらく続きそうです。

 これらのことを踏まえると、製薬企業やMRは薬局のM&Aも要注目ですね。調剤薬局グループの規模が大きくなることは納入価の交渉に伴う製薬企業の利益額にも影響が出るかもしれません。また、薬局グループが本部一括購入ということになれば、MRの実績や処方の動きなど市場の変化を把握しにくくなるかもしれません。

 このように、医療制度の変化に伴い医療機関の対応も変わって行きます。今は製薬企業のビジネスへの影響が小さくても、将来無視できない影響を持つ可能性もあります。これらの変化への注意が乏しい製薬企業が多いようにお見受けしますが、ビジネス環境の変化を正しく把握し、将来のリスクをいち早く察知することは適切な次の一手に繋がります。病院や診療所だけでなく、薬局の動向にも注意が必要でしょう。





 
 

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