第11回 薬局と処方元が仕事しやすい環境を作る

2018/02/28

 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。
 今回は、薬局の薬剤師の方から教わった、MRができる薬局への貢献の事例をご紹介します。
 お役立てできたら嬉しいです。では、参りましょう!



 薬局は現在日常の調剤業務において、また診療報酬・調剤報酬・薬価の各改定を直前に控え、
 様々なところで困っています。
 例えば、
 ・かかりつけ薬剤師の要件をどのようにして満たすか?
 ・毎日の処方箋枚数をどうやって増やすか?
 ・薬剤師を増やしたいが採用がうまくできていない...
 ・薬価改定直前のためできる限り買い控えをしたいが、在庫調整が難しい...
 ・薬剤の一包化の際、薬剤の刻印が見にくかったり、色や大きさが似ていて、
  きちんと調剤できているかの確認に手間がかかる...
 ・(処方箋への患者さんの検査値印刷が未実施のところでは)患者さんが持参した
  処方箋の内容から、患者さんの疾患が特定しづらい...
 ・薬剤師一人で経営している薬局なので、訪問調剤ができない...
 などなど、薬局の困り事はたくさんあります。





 MRでも薬局にできる取り組みを一緒に見ていきましょう。

 これは、私の知り合いの糖尿病専門医の医師から教わったお話です。

 この医師は、良好な血糖コントロールを実現していて、きちんと定期的に通院する患者さんが多いこともあり、ご自身の服薬指導にある程度の自信がありました。
 しかし、この医師の病院は、糖尿病外来では複数の医師が担当しています。若い医師の卒後臨床研修病院にも指定されているため、医師によっては定期的な通院ができていない血糖コントロール不良の患者さんも少なからずいました。
その状況に頭を悩めていた医師は、自身が信頼する糖尿病治療薬担当MRにこのことを相談しました。

 そうしたところ、そのMRは
「では先生、門前薬局と先生方が一緒に糖尿病治療について学ぶ勉強会を企画しましょうか?」
 と答えました。
 このMRは、この病院の門前薬局にも頻繁に情報提供で訪問している中、薬剤師から
「この患者さんに、なぜこの糖尿病治療薬の組み合わせで処方されているのかが分からない。」
「先生の治療方針について分からないので、患者さんに服薬指導がしにくい。」
「もう少し患者さんに丁寧な服薬指導ができたら、患者さんに定期的な通院を促す説明ができるのに。」
 という話を事前に聞いていたのです。

 この話を聞いた糖尿病専門医の医師は、その勉強会企画に賛同し、すぐに開催しました。
また、その際、病院からFAX送信されている処方箋枚数が多い調剤薬局をピックアップし、病院と何軒もの調剤薬局の合同勉強会として開催しました。
 この勉強会では、糖尿病専門医による
 ・最新の糖尿病治療
 ・海外のエビデンスの紹介
 ・海外と日本のガイドラインの解説
 ・専門医の治療方針の解説
 が行われました。
 また、薬剤師側からは
 ・これまで処方箋で疑義、返戻、査定があった事例紹介
 ・患者さんへの服薬指導が難しい事例
 ・服薬指導がしやすくなった場合の医師と薬剤師のメリット
 などをお話しされました。

 薬剤師側は、処方元の医師の糖尿病治療の方針がわかるようになったことで、患者さんへの服薬指導が格段にしやすくなりました。
 医師側では、自分で気づかなかった薬局での服薬指導の難しさを知ったことで、医師の外来での患者さんへの説明の仕方を見直すことにつながりました。また、薬局からの疑義照会にも積極的に対応するようになりました。
 医師と薬剤師の双方が、良好なコミュニケーションを取れるようになったのです。
そのことによって、医師も薬剤師もお互いの職域で仕事が非常にやりやすくなりました。
 患者さんに対して、医師と薬剤師が同じメッセージで服薬指導ができるようになったためです。
 もちろん、この勉強会を企画提案したMRは医師からも薬剤師からも感謝され、MRの実績も大きく伸びました。




 まずは薬局から見てみましょう。薬局では、「後発医薬品調剤体制加算」が後発薬品使用促進策に
 該当します。今回の診療報酬改定において、後発医薬品調剤体制加算には2つの基本的な考え方が
 あります。

 1.後発医薬品調剤体制加算について、後発品の調剤数量割合の基準を引 き上げ、
   調剤数量に応じた評価に見直す。
   ↓
   薬局での後発医薬品調剤体制加算は、2段階から3段階に増えます。おそらく点数 も、
   新設される後発医薬品調剤体制加算3が最も高い点数が付くことが予想されます。
   併せて同加算1,2も見直されます。さらに、後発医薬品の調剤数量割合も見直されます。
   薬局としては、高い加算が欲しければ、後発医薬品をより多く調剤する必要があります。

 2.後発医薬品の調剤数量割合が著しく低い薬局に対する調剤基本料の減算規定を設ける。
   ↓
   後発医薬品をあまり取り扱っていない薬局は、調剤基本料が減算されます。
   皆様ご存知の通り、薬局の利益の源泉はこの調剤基本料です。従って、これまで  
   後発医薬品を調剤してこなかった薬局がいよいよ後発医薬品を採用せざるを得ない
   状況になったと言えるでしょう。




 
 
次に医療機関での後発医薬品使用促進策を見てみましょう。ここでは診療報酬改定の個別改定項目の記述に従い、病院・診療所を医療機関と記述します。
 今回の診療報酬改定での基本的な考え方は、「医療機関における後発医薬品使用体制加算及び外来後発医薬品使用体制加算について、新たな数量シェア目標を踏まえ要件を見直すこと」です。その具体的な内容が2つ示されています。

 1.(病院・診療所での後発医薬品使用について)後発医薬品使用体制加算及び
   外来後発医薬品使用体制加算について、 後発品使用率の向上に伴う評価の見直しを
   行う。
   ↓
   後発医薬品使用体制加算は3段階から4段階になります。点数も後発医薬品の
   使用割合も見直され、新たな使用割合の施設基準に応じて4段階になります。
   外来後発医薬品使用体制加算は2段階から3段階になります。点数および後発医薬品
   の使用割合の見直しも後発医薬品使用体制加算と同様です。

 2.(DPC制度における後発医薬品の扱いについて)DPC制度における後発医薬品
   係数の見直しに伴い、後発医薬品使用体制加算の対象にDPC対象病棟入院患者を
   追加する。
   ↓
   DPC対象病棟に入院している患者については、後発医薬品使用体制加算の対象から
   除外されます。診療報酬に詳しいMRが、DPC病棟の入院患者さんへの先発品の処方
   を依頼しているという話も聞くことがありましたが、今後2018年4月以降は、その手
   は使えなくなります。

 3.(入院時の減薬について)入院患者に対する減薬に係る取組実績を踏まえ、薬剤総合
   評価調整加算の評価対象に地域包括ケア病棟入院料を追加する。また、退院後、地域
   包括診療料等を算定する場合に、入院・入所先の医療機関等と医薬品の適正使用に係
   る連携について評価を行う。
   ↓
    ここで製薬企業の販売実績に直接関わると考えられるのは、減薬と治療レジメンの
   連携ですね。従来から入院時の減薬が取り組まれてきていましたが、患者さんが地域
   包括ケア病棟に入院するケースが増えてきたことを受けて、同病棟への入院が薬剤総
   合評価調整加算の評価対象に追加されます。

  薬剤総合評価調整加算は、「入院前に6種類以上の薬剤を内服していた患者さん(入院時において当該患者が処方されている内服薬のうち、頓用薬及び服用を開始して4週間以内の薬剤を除きます。)」もしくは「精神病棟に入院中の患者さんで4種類以上の薬剤を内服していた患者さん」が、退院までに2種類以上薬剤を減らせた場合算定できる加算です。これまでは退院時に1回250点が請求できました。

 今回の診療報酬改定では、薬剤総合評価調整加算の対象病棟が広がる(地域包括ケア病棟が追加される)ことと、地域包括ケア病棟へ入院するであろう高齢の患者さんが増加していることを併せて考えれば、臨床現場における生活習慣病治療薬の淘汰は一層進むことでしょう。
 また、患者さんが入院・転院・転居などで居場所が変わっても、効率よく高い効果の治療がなされているかの評価も盛り込まれそうです。この点はまだ確定ではないようですので今後の議論も見ていく必要がありますが、そうなった場合単なる病診連携では終わらず、地域の中での治療方針のパスがより精度の高いものを作成し、地域に広く流布し活用されることにも繋がりそうです。そのパスの中に、皆様の企業の製品が組み込まれていなければ、売上の維持・向上は望めなさそうです。
  まさにエリアマーケティングの実践を、今後の製薬企業が都道府県ごとにやらなければならないのだということが言えます。





  今回ご紹介したお話は、様々な場面で応用できます。
 例えば大都市圏のビル診では、同じビルの中にいる薬局の薬剤師が処方元の医師の顔を見たことがないなどいうこともあります。
 また、医師側に疑義照会を嫌うような対応が見られると、薬剤師側がコミュニケーションをとること自体に及び腰になることもあります。
 しかし、明らかに保険で査定・返戻されるような場合は、その指摘自体は医師側が喜ぶこともあります。誰でも保険で切られることは好まないですからね。
 そのような場合、MRが上手に話を医師と薬剤師に通しながら合同の企画を提案すると、その地域医療の質が高まります。
 MRからこのような提案がなされることは、医師にも薬剤師にも喜ばれる話です。
今後のMR活動・製薬企業の取り組みに、ぜひご一考ください。