第10回 平成30年度診療報酬改定の個別改定項目は、後発医薬品使用促進策がたくさん...

2018/01/28

 
 皆様、【Oncology MR Training Project】主宰の高橋洋明です。
 今回も本コラムをご覧くださり、ありがとうございます。

 2018年1月24日に、今年の診療報酬改定の個別改定項目(短冊)が明らかになりましたね。
 皆様ご覧になりましたか?
 まだご覧になっていない方は、下記のリンクからぜひご確認ください。


 ○個別改定項目(その1)について
 ○入院医療(その11)について
   ・ 総-2(PDF:886KB)
 ○平成28年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について(案)
    ・総-3(PDF:138KB)
 今回の個別改定項目ではまだ点数が入っていませんが、項目が明らかになることで診療
報酬の具体的な改定内容がわかります。
 また、今後の中医協での議論によっては個別改定項目の内容も変更になるかもしれませんが、大きな方向は変わらないと考えられます。

 これまで中医協の議論は「地域包括ケアシステム構築に向けた取り組み」や「7対1一般病棟と10対1一般病棟の扱い」などが特に重点的に議論されてきたように思われます。
 製薬業界としては、「新薬価制度」、「後発医薬品使用促進策」なども気になるところですね。

 このように、診療報酬改定・薬価改定には注目すべきポイントが多々ありますが、今回は特に製薬業界に関わるポイントに絞って、皆様と一緒に見ていきましょう。






 製薬業界としては、まず「後発医薬品の使用促進策」が気になるところでしょう。
 平成29年6月の閣議決定において、「2020年(平成32年)9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する。」と定められたことを受けて、今回の診療報酬改定においても後発医薬品の使用を促す施策が取られます。具体的には、「薬局での調剤」と「医療機関での使用」という2つの場面で、後発医薬品の調剤または使用の状況に応じて加算もしくは減算されます。




 まずは薬局から見てみましょう。薬局では、「後発医薬品調剤体制加算」が後発薬品使用促進策に
 該当します。今回の診療報酬改定において、後発医薬品調剤体制加算には2つの基本的な考え方が
 あります。

 1.後発医薬品調剤体制加算について、後発品の調剤数量割合の基準を引 き上げ、
   調剤数量に応じた評価に見直す。
   ↓
   薬局での後発医薬品調剤体制加算は、2段階から3段階に増えます。おそらく点数 も、
   新設される後発医薬品調剤体制加算3が最も高い点数が付くことが予想されます。
   併せて同加算1,2も見直されます。さらに、後発医薬品の調剤数量割合も見直されます。
   薬局としては、高い加算が欲しければ、後発医薬品をより多く調剤する必要があります。

 2.後発医薬品の調剤数量割合が著しく低い薬局に対する調剤基本料の減算規定を設ける。
   ↓
   後発医薬品をあまり取り扱っていない薬局は、調剤基本料が減算されます。
   皆様ご存知の通り、薬局の利益の源泉はこの調剤基本料です。従って、これまで  
   後発医薬品を調剤してこなかった薬局がいよいよ後発医薬品を採用せざるを得ない
   状況になったと言えるでしょう。




 
 
次に医療機関での後発医薬品使用促進策を見てみましょう。ここでは診療報酬改定の個別改定項目の記述に従い、病院・診療所を医療機関と記述します。
 今回の診療報酬改定での基本的な考え方は、「医療機関における後発医薬品使用体制加算及び外来後発医薬品使用体制加算について、新たな数量シェア目標を踏まえ要件を見直すこと」です。その具体的な内容が2つ示されています。

 1.(病院・診療所での後発医薬品使用について)後発医薬品使用体制加算及び
   外来後発医薬品使用体制加算について、 後発品使用率の向上に伴う評価の見直しを
   行う。
   ↓
   後発医薬品使用体制加算は3段階から4段階になります。点数も後発医薬品の
   使用割合も見直され、新たな使用割合の施設基準に応じて4段階になります。
   外来後発医薬品使用体制加算は2段階から3段階になります。点数および後発医薬品
   の使用割合の見直しも後発医薬品使用体制加算と同様です。

 2.(DPC制度における後発医薬品の扱いについて)DPC制度における後発医薬品
   係数の見直しに伴い、後発医薬品使用体制加算の対象にDPC対象病棟入院患者を
   追加する。
   ↓
   DPC対象病棟に入院している患者については、後発医薬品使用体制加算の対象から
   除外されます。診療報酬に詳しいMRが、DPC病棟の入院患者さんへの先発品の処方
   を依頼しているという話も聞くことがありましたが、今後2018年4月以降は、その手
   は使えなくなります。

 3.(入院時の減薬について)入院患者に対する減薬に係る取組実績を踏まえ、薬剤総合
   評価調整加算の評価対象に地域包括ケア病棟入院料を追加する。また、退院後、地域
   包括診療料等を算定する場合に、入院・入所先の医療機関等と医薬品の適正使用に係
   る連携について評価を行う。
   ↓
    ここで製薬企業の販売実績に直接関わると考えられるのは、減薬と治療レジメンの
   連携ですね。従来から入院時の減薬が取り組まれてきていましたが、患者さんが地域
   包括ケア病棟に入院するケースが増えてきたことを受けて、同病棟への入院が薬剤総
   合評価調整加算の評価対象に追加されます。

  薬剤総合評価調整加算は、「入院前に6種類以上の薬剤を内服していた患者さん (入院時において当該患者が処方されている内服薬のうち、頓用薬及び服用を開始して4週間以内の薬剤を除きます。)」もしくは「精神病棟に入院中の患者さんで4種類以上の薬剤を内服していた患者さん」が、退院までに2種類以上薬剤を減らせた場合算定できる加算です。これまでは退院時に1回250点が請求できました。

 今回の診療報酬改定では、薬剤総合評価調整加算の対象病棟が広がる(地域包括ケア病棟が追加される)ことと、地域包括ケア病棟へ入院するであろう高齢の患者さんが増加していることを併せて考えれば、臨床現場における生活習慣病治療薬の淘汰は一層進むことでしょう。

 また、患者さんが入院・転院・転居などで居場所が変わっても、効率よく高い効果の治療がなされているかの評価も盛り込まれそうです。この点はまだ確定ではないようですので今後の議論も見ていく必要がありますが、そうなった場合単なる病診連携では終わらず、地域の中での治療方針のパスがより精度の高いものを作成し、地域に広く流布し活用されることにも繋がりそうです。そのパスの中に、皆様の企業の製品が組み込まれていなければ、売上の維持・向上は望めなさそうです。
  まさにエリアマーケティングの実践を、今後の製薬企業が都道府県ごとにやらなけ ればならないのだということが言えます。





  実は、この個別改定項目に書いていないことで、一部報道が報じている重要なことがあります。
 それは、「都道府県毎の後発医薬品の市場のシェアに応じて、個別の都府県に対して別途実施する施策がある」ということです。

 2018年1月22日に報じられましたが、厚労省は「後発医薬品使用促進対策事業の10拠 点」を明らかにしました。この10拠点は、東京都、神奈川県、大阪府、京都府、福岡県、愛知県、徳島県、高知県、広島県、山梨県です。これらは後発品の使用率が低い地域や人口、処方量などを踏まえて指定されました。この背景には、2018年4月からの第3次医療費適正化計画の施行があります。

 すでに皆様ご存知の通り、2018年4月からは各都道府県がそれぞれその地域特性に合った医療・介護・健康作りの施策を立案・実行していきます。その際、アウトカムも評価されます。医薬品に関することでは重複処方の見直し、減薬、適正使用の推進などが取り組まれていきます。

 上記の10都府県は、今後後発医薬品への切り替えが一層進むことが考えられますし、その影響は各製薬企業の販売実績の伸び悩みとして現れることでしょう。

 このように、厚労省をはじめとした我が国の後発医薬品使用促進の取り組みは、製薬企業各社に対して今後どのような企業戦略を立案・実行するのかを迫ります。
 すでに、開発のポートフォリオの形成や製品のマーケティングプランの立案と実行のみならず、社員の雇用にも影響が出ています。ですが、今後さらに厚労省をはじめとした国全体によるこれらの取り組みが、製薬業界全体にも様々な影響を及ぼすことは間違いなさそうです。

 その備えとして、まずは今回ご紹介いたしました診療報酬改定の個別改定項目の内容を理解することから初めて見ることをお勧めします。私も診療報酬改定の勉強を始めた時、診療報酬改定の概要や個別改定項目を3日くらいかけて全て読み、わからない言葉を調べ、理解を深めました。そのことによって、病院・診療所が今、診療報酬の改定によってどのような悩みがあるのか?などが非常によくわかるようになりました。

 お客様のお困りごとが何か?を知らずして、ビジネスは成功しません。医療環境が激変するこの時期に、診療報酬改定を学ぶことは、製薬業界で生き延びていけることに繋がるかもしれませんね。






 

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